定点観測

変わるまち,変わらないまち

衆議院選挙の結果が見えてきた.
候補者の当落が報道されているが,重要なことは,選挙結果を受けて政権政党が国政運営をどのように展開することになるか,ということだろう.

権力が長期にわたってひとつの政党に集中する独裁専制的な状況が続くと,チェック機能が十分働かず,国民に対する甘えから腐敗や堕落が起こりやすくなる.人類史上,独裁専制体制で堕落腐敗しなかった権力はひとつもなく,そのアンチテーゼとして民主主義の思想が発明されたことを考えると,参政権と選挙制度は長期の政権政党による独裁専制を防ぐための制度とも言えるだろう.

そういう意味で,「変化」は常に重要だと思う.
国家的な変化がどれくらいの頻度で起こるべきかは分からないが,自由民主党と公明党による政権は2012年12月から9年経っていて,衆参両院のねじれが消えた安定多数を8年間も維持している.変化のスピードの早い今日,「十年ひと昔」は「五年ひと昔」くらいになっているはずで,自公政権はふた昔前から続いていると言えるかもしれない.

岡山県の確定投票率は,50.94%だった.2人にひとりしか投票しないという現実にはため息が出る.
2009年に政権交代が起こった衆院選の投票率が68.57%だったことを考えると,岡山県民は「まだ変化する時ではない」と判断したと言えるだろうか.あるいは,変化することの意義を忘れてしまったか,もしくは国家と地域と生活の未来に関心を失ってしまったか.

変化は改革・改善につながることもあれば,混乱につながることもある.右から左へ,そして左から右へ,文字通り右往左往することで,政策の一貫性や長期的改善が達成されず,地方行政と国民生活が不安定になることもあるかもしれない.しかし,混乱を恐れて変化を忌避する先には独裁専制が待っている.

私は変化することが好きだ.混乱も,改革・改善に向かうものなら喜んで受け入れるタイプだ.
今回の衆院選で政権は変わらなかった.ほとんど揺らぎもしなかったと言っていいだろう.
この結果が独裁専制体制を強化するようなことにならないように,政治をチェックする視線をより強くしなければと思うとともに,せめて,自分自身の仕事とその先にあるまちは変化させ続けたいと心新たにした.

髙岡 敦史

WRITTEN BY

髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。