定点観測

ゲートボールが大学の授業に

一般教養の体育(岡山大学では「するスポーツ演習」という名称)で,今年度3学期から「ソーシャル・インクルージョン・スポーツ」という名称の授業を開講している.前半はボッチャ,後半はゲートボールを実施する.(3学期の様子はこちら

12月からの4学期もゲートボールの授業が始まった.
日本ゲートボール連合の「ゲートボール再生プロジェクト」の一環としての支援(用具提供,指導者派遣など)の下,岡山県ゲートボール協会の会長さん以下4名の現役プレーヤーの方々が毎回指導に来て下さっている.

受講生は1,2年生がほとんどだから,指導して下さる方々との年の差は40歳以上だ.
しかも,ゲートボールをしたことのある学生などいないから,長年のプレーヤーが全くの初心者に指導することになるわけで,自ずと地位の差が生まれるはずなのだが,指導の来られる皆さんはゲートボール界の危機的状況を何とかしようという思いで来られるから,学生たちの目線で,学生たちに考えさせるように指導して下さる.

ゲートボールは,最盛期には600万人いたとされる愛好家が,今では10万人を切るまで減少した.
県協会会長の話では,軍隊上がりのプレーヤーが怒鳴ったり,チーム内でけんかになったりする(殺人事件にまで発展したこともある)ような旧態依然とした文化だったことと,高齢者の自然減が原因らしい.県協会としても,日本ゲートボール連合としても,特に若い世代へのすそ野拡大が喫緊の課題だという認識があるという.
この認識は,授業に指導に来られる方々にも少なからず浸透していて,上から目線で学生を指導する人はいない.

日頃,交流することのない大学生と高齢者が,同じルールでひとつのスポーツを楽しめる機会はなかなか作れない.この授業が,学生たちや高齢者たちのスポーツ観を変えていけるといいと思う.

髙岡 敦史

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髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。