定点観測

LIFES創刊前夜

気の早い梅雨の合間の好天に恵まれた週末.
10都道府県に発出されている緊急事態宣言の6月20日までの延長が決まり,心地良い陽気とはうらはらに「またか…」と鬱々した気分になっている.

ウィルスは確かに怖い.死者も多いし,私も発症はしたくない.
しかし,本来すぐに会えるはずの人とのオンラインでの会話は,同時多発的な会話はできないし,「対面で話せたら…」と想像すると味気なく感じてしまう.馴染みのお店に飲みに行けないのも寂しい.

こういうとき,「人間」や「ヒト」である私を強く感じる.
人間は他者とコミュニケートし,コミュニティをつくることで生きている.
コミュニケーションとコミュニティは,ネット上でも成立する.
しかし,私たちは「ヒト」(生物分類としては,哺乳類サル目ヒト亜科ヒト族のホモ・サピエンス・サピエンスというらしい)という名の生物だ.

私は私として独立してここにいる,と思いがちだが,私を構成する37兆個の細胞は,10ナノメートル(髪の毛の直径の1万分の1)程度の薄い細胞膜を通して外界と物質を出入りさせている.そんなことをイメージすると,私は外界とともにあると考えられるだろう.
人は他者と直接会い,佇まいを感じ,表情を感じ,匂いを感じ,息遣いを感じることで生きていけるのではないだろうか.そして,もしかすると,新型コロナウィルスも,根絶させるべき他者ではなく,ともに生きる他者なのかもしれない.(ころころとその性格を変異させるからコミュニケートするのが大変な他者だけど)

コロナ禍は,そんなことを考える機会をくれている.
明日はいよいよLIFES公開!

髙岡 敦史

WRITTEN BY

髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。