定点観測

高校生のスポーツまちづくり探究に出会う

某市の高校生の探究活動の授業で講義をさせて頂いた.

高校で2003年から始まった「総合的な学習の時間」が,来年度から「総合的な探究の時間」になる.学習指導要領には,その目標が次のように示されている.

探究の見方・考え方を働かせ,横断的・総合的な学習を行うことを通して,自己の在り方生き方を考えながら,よりよく課題を発見し解決していくための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
1.探究の過程において,課題の発見と解決に必要な知識及び技能を身に付け,課題に関わる概念を形成し,探究の意義や価値を理解するようにする。
2.実社会や実生活と自己との関わりから問いを見いだし,自分で課題を立て,情報を集め、整理・分析して,まとめ・表現することができるようにする。
3.探究に主体的・協働的に取り組むとともに,互いのよさを生かしながら,新たな価値を創造し,よりよい社会を実現しようとする態度を養う。


大雑把に言えば,実社会の課題に対峙し,その解決に向かう思考を重ねるという高い実践性がその特徴にある.

講義を受けていた高校生たちは,スポーツに関わる探究テーマを設定していて,子どもたちが遊びやすい公園の情報発信や,遊びプログラムを通した子どもたちの運動離れの解決,近隣の大規模運動公園のアクセシビリティの悪さの解決といった興味深いテーマが設定されていた.
担当の先生からのオーダーは「『スポーツまちづくりの教科書』を読んだから,その内容を分かりやすく解説してほしい」とのことだった.確かに,設定していたテーマはスポーツまちづくりに関わるものだ.
しかし,彼ら彼女らが設定したテーマや「質問したいこと」の内容を教えてもらって,「私が一方的に話すより,議論した方がいいですね」と8割以上の時間を質問に回答しながら対話することに割いた.(スポーツまちづくりの理論を10分足らずで説明したのは初めてだった)

情報収集と思考の広さと深さはまだまだ高校生のレベルを脱していないのだが,テーマ設定はいずれも重要で拡がりも深さもあるから,それぞれの探究活動を通した課題解決の社会的インパクトを自分たちで考えてイメージすることができれば,探究はどこまででも広がり,深まるはずだ.少しでもその手助けになったのなら嬉しい.
そして何より,スポーツまちづくりに関わる地域課題が学校の探究活動のテーマになるほど一般的なものになってきたことが嬉しかった.

髙岡 敦史

WRITTEN BY

髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。