定点観測

PCR検査センターとスポーツ施設

初めてPCR検査を受けてきた.
民間の検査センターで,翌日18時までに結果が分かる簡便さで4,000円.

PCRとは,Polymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の略で,ウイルス等のDNAを増幅させて検出する検査手法だ.ポリメラーゼという酵素で唾液内の新型コロナウィルスDNAを増やして,わずかな量のウィルスしかなくても,その有無が分かるらしい.

今回は,仕事先の要請でPCR検査が必要になったわけだが,「ワクチン・検査パッケージ」が検討されているし,社会経済活動の平常化と行動制限の緩和が進むにつれてPCR検査をしなければいけない状況が増えてくるのではないかと思われる.

しかし,検査センターはそう多くない.
誰でも検査できる医療機関以外の検査センターは,岡山県内に2カ所しか確認できない.いずれも岡山市内だ.新型コロナウィルス感染症の特効薬が商品化されるまでの期間,行動制限の緩和とウィルス感染の陰性確認がセットになるなら,居住エリアの近くで,しかも無料で検査できなければいけないだろう.
そういう意味で,PCR検査センターは(しばらくの間)社会生活の基礎インフラに位置付けられることになりそうだ.

そういう想像をすると,ふと気付く.
「ストック最適化」という政策方針に基づいて,各地の公共スポーツ施設が廃止されつつあるのだ.これまでインフラとして整備されてきたスポーツ施設だが,ランニングコスト削減のために,特に老朽化した施設や人口減少の激しい地域の施設が消えてしまう事態だ.

PCR検査センターは社会インフラとして増える.同じ社会インフラだったはずのスポーツ施設は減っていく.
「今は,スポーツよりも,ウィルス感染の拡大を防ぐ方が重要だ」という主張は,東京2020オリパラ開催前のものと同じで,噛み合っていない.どちらも大事だ.

スポーツ施設は一度なくなると(よほどのことがない限り)復活しない.
インフラには「今増やすべきもの」が生まれるような流行などないはずだ.誰にとっても大切なものは,大切だ.
PCR検査センターの増加の背景にあるパンデミックに対する危機感と同じような意識が,少子高齢化が進む地域社会と,ただ漫然と既得権者として公共スポーツ施設を利用してきた地域スポーツ界にもあったら,施設廃止という状況は生まれなかっただろうな,と思った.

髙岡 敦史

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髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。