定点観測

ただいまボッチャの授業中

「ソーシャル・インクルージョン・スポーツ」というスポーツ実技の授業をしている.
主に大学1・2年生が履修する教養教育の授業だ.
今年度は,ボッチャとゲートボールを実施する.今はボッチャの期間中だ.
性別も,運動の得意不得意も超えて,誰もがともに競い合えることの楽しさを体験しながら,なぜボッチャやゲートボールがインクルーシブ性を持つのかを考える.

これまで,フットサルやバスケットボール等の授業をしてきた.
しかし,「フットサルとはこういうスポーツ」,「バスケはこんなもの」という学生たちの固定観念を崩した上で,インクルーシブな形に改良されたフットサルやバスケに到達するには,時間が足りなかった.どこまでやっても,誰もが今持っている力を出し切って競い合うという到達点には届かず,経験者や運動能力の高い者が手加減をするか,未経験者や能力の低い者が低調なゲーム参加に甘んじるしかなかった.

ボッチャはその課題を一気に飛び越えた.
運動の苦手そうな女子学生に,いかにも運動の出来そうな男子学生が完敗して本気で悔しがる,という風景もそこかしこで起こる.
学生たちは,あっという間にボッチャの楽しさに引き込まれた.これまでほとんど経験したこのないインクルーシブな状況というより,純粋に競い合うことの楽しさを感じているようだ.

大切なのは,インクルーシブな状況をいかに生み出すか,ということだ.
ボッチャやゲートボールを通して,スポーツのシンクルーシブ構造は理解できるだろう.スポーツから離れて,クラスや大学,コミュニティや社会のインクルージョンにまで想像を拡げることが到達目標だ.

髙岡 敦史

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髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。