定点観測

自然の豊かさ,人の豊かさ

岡山県新庄村にて,FORESTRAILモニタリングランを開催した.
日も昇らぬ前から準備を始めるために車に乗ったら,フロントガラスがしっかり凍り付いていた.

台風とコロナ禍で3年連続の中止になったFORESTRAIL SHINJO-HIRUZEN.
来年の大会に向けてパワーアップさせるために,大会運営の組織体制も見直し,新たな企画をしようと今回のモニタリングランの開催に至った.

トレイルランナーとしての意見を集めるためのイベントなので,参加者募集は,これまでFORESTRAILに参加されたことのある方々だ.1,200名以上の中から限定20名だから,あっという間に参加枠が埋まった.

快晴の秋晴れ.
エイドステーションは中国山地の分水嶺にあって,北側には遠く米子市内と中海と大山隠岐国立公園が望め,南側は雲海が広がる.
そんな自然の中にいるから,スタッフとして参加していても清々しい気持ちになるし,ランナーの笑顔から元気がもらえる.支えるスポーツとしてもトレイルランは高価値だ.(私にはトレイルランをする体力はないが,するスポーツとしての価値はランナーの方々の表情からひしひしと感じることができる)

このように,自然環境はスポーツインフラとして大きな価値を生み出す可能性があるが,自然の姿のまま活用できるわけではない.
トレイルランイベントの前には安全かつ魅力的なコース設定と草刈り等の整備が必要で,安全確保のための準備や緊急時対応の体制づくりは基本だ.多くのランナーが走り抜けることによる環境インパクトを最小にする工夫も大切なことだ.

中山間地域や沿岸・島しょ地域には豊かな自然環境がある.
それを何とかスポーツインフラにしようと試みる地域は多いが,先の基本を整えるだけでも,地域の中に,知識を蓄積し、困難を乗り越える情熱を共有し、強固な連携体制を構築することが必要だ.
自然環境をスポーツインフラにするには,自然の豊かさと同じだけのコミュニティの豊かさが求められる,ということかもしれない.

髙岡 敦史

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髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。