”部活動の地域移行” 再考④:移行論の欠陥の根っこ
一連の”部活動の地域移行”に関する記事を読んで頂いて,今日もお話がしたいとわざわざ他県からお越し頂いた.
スポーツ庁等で地域移行に深く関わってらっしゃる方だったので,地域移行論の広く深い話ができた.
色々とお話する中で,今まさに国が進めようとしている地域移行論の欠陥の根っこは,
「部活動とそれを支えると想定されている環境が,地域によって違う」
というところにあるということが見えてきた.
民間企業や地域スポーツクラブが支えるというイメージは,それが可能なエリアだけで成立しているものだろう.例えば,民間のスポーツ教室やフィットネスクラブが軒並み集積しているエリアなら,ある程度の中学校をカバーすることはできるかもしれない.学校区にしっかりした総合型地域スポーツクラブがあるところは,その学校だけはサポートできるかもしれない.
しかし,それはごく限られた地域だ.
岡山市は人口70万人で,37の中学校があるが,民間・地域セクターで支えることができる中学校はその内,市内中心部に立地する半数ほどだろう.残り半数は,住宅地か中山間地域にあって,指導者の調達も日常的な来校も,地元からの資金調達も難しい.そういう学校では,校内で活動できていることがセーフティネットになっていて,部活動が地域に放り出されたらスポーツ参加機会が失われるリスクが極めて高い.
市内中心部の中学校も,人的・財務的資源を自助努力で調達することは難しい.基本的に学校区を超えて資源調達の活動をすることが難しいからだ.複数の学校をカバーする部活動支援プラットフォーム機関が必要になるだろう.
そうしたことを一切考慮に入れずに「それ,地域移行だ」と叫んでも,現実は変えられない.
国家政策は,大所高所から俯瞰する視点に加えて,一つひとつの地域とそこに生きる人たちの生活実態を理解する視点が必要だ.地域移行論にはそれが決定的に欠けている.