定点観測

”部活動の地域移行” 再考⑤:地域移行は究極の一手ではない

地域部活動,部活動の地域移行について,相変わらず問い合わせが多い.
「岡山県や全国はどういう方向性ですか?」,「どう考えたらいいですか?」というものがほとんどだ.
中には,「もう部活動無くしてもいいですか?」といったものまで出てきた.

岡山県でも,国でも,まだ議論が始まったばかりだから,軽々に「こう考えましょう」とは言えないけれど,どのような方向に進むことになったとしても,次のことは共有可能な大原則だろう.

「放課後の子どもたちのスポーツライフを,持続可能な形で豊かにすること」

この遠いゴールさえ見失わずに追求し続けることができていれば,ゴールまでの歩み方は多様でいいと思う.
むしろ,学校とそれを取り巻く状況も地域スポーツ環境も多様だから,ゴールまでの歩み方も多様であるしかないとも言えるだろう.

そう考えると,地域移行を前提にすることはできない,ということになるはずだ.

そして,「豊かにする」というゴール設定は「これで100%豊かになった」という終点があるものではないし,持続可能性の確保を条件にしている時点で,豊かにし続ける営みが求められることになる.
そうだとすると,豊かにする営みの循環と世代継承を考えなければいけないわけで,自ずとマルチ・ステイクホルダーな体制づくりは必要不可欠になってくるはずだ.

運動部活動が抱えている課題は多様で根深い.
地域スポーツも地域によって多様な状況で,課題は多い.
そして,それらの課題は長年にわたって指摘され続けてきたことで,解決は簡単ではない.
それが,地域移行という一手によってオセロの白黒を一気にひっくり返すことができると期待するのは無理がある.
各部,各学校,各地域で知恵と汗,必要とあればお金を出し合って,一歩ずつ進むしかないだろう.

髙岡 敦史

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髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。