定点観測

理想のまちにほしいもの6:遊びに行けるお城,神社仏閣,文化財

城郭や神社仏閣,遺跡や歴史的に意味深い建築物のような文化財は,まちが積み重ねてきた時間の証人だ.大昔から今まで,まちが綿々と続いていることを体感させてくれる.

わたしたち一人ひとりは,誰かと誰かの間の子どもとして生まれ育ってきた長い時間を抱えているけれど,両親もそうで,祖父母もそうで,ずっと前の祖先もそうで,どこかで途切れていたら今のわたしは存在しないわけで,そういう意味で個人の存在は奇跡的とも言える.歴史的な文化財はそうした奇跡の上に現存しているもので,さらに奇跡的だと思う.
もし,いつかの,どこかの誰かが「こんな古いものいらないじゃん」と破壊してしまっていたら,まちの時間の証人はなくなってしまっていたわけで,奇跡的につながった祖先全員が「これは大切だから残そう」と思い続けたことの証だ.

だから,歴史的文化財はとても大切に保護されるのだが,貴重すぎて保護が厳しすぎるものは離れたところから見るしかなく,愛着が湧きにくいとも思える.できれば,気軽に遊びに訪れることができる文化財であってほしい.

多くの人が触れると劣化が進むのだろうし,落書きする不逞の輩までいるものだから,誰でも自由に気軽に遊びに行けるようにはなっていないのだけれど,まちでの日々の暮らしの中に歴史が織り交ざると,まちが積み重ねてきた時間の最先端に立っているという意識も育まれるのではないかと思う.

髙岡 敦史

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髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。