定点観測

理想のまちにほしいもの9:学校差や地域差のない保育・教育環境

第9回は「学校差や地域差のない保育・教育環境」.

前回,イノベーティブな公立学校園がほしいと書いたが,まち全体のことを考えると,各校園の教育実践に地域差や学校差がない方がいいと思う.

進学校に合格者を多数輩出する中学校の周辺の地価が上がる,ということはよくあることで,そこに家を持てる家庭はそれなりの世帯収入がある家庭だから,いよいよ経済格差が教育格差と連動することになる.

本来,公立学校園を支える公教育制度は「どこに生まれ,どこに暮らしていても等しく一定レベルの教育を受けられる」ためのものだ.実際には,ある程度担保されているし,日本の公教育制度の機会均等性は国際的に高く評価されるものだ.
それでも,現実には同一市内で学校差はあるし,教育委員会はそのことを公式には認めないだろうが,学校差は校区内住民の世帯年収と連動しているから,学校差は地域差とつながっていると思われる.少なくとも学校区制が採用されている保・幼・小・中学校では,それが固定化される傾向にある.
もちろん,教育委員会によってテコ入れされて学校改善が進む事例は数多ある.教育は人だから,教員の努力によって良くも悪くもなるのも事実だ.そういう意味では学校差は偶然とも言える.

しかし,それではダメだろう.
まちの中のエリアに個性はあっていいが,まちの未来を創る教育に地域差があると,各地域の未来に大きな差が生じるはずだ.
このまちのどこに暮らしていようと,安心してその地域の保育園から中学校まで通わせられるというのは,まちの暮らしの安心の基盤だろう.

髙岡 敦史

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髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。