定点観測

理想のまちにほしいもの18:まち全体が高揚する祭り

第18回は,「まち全体が高揚する祭り」.

祭りの開催される日,まちは高揚感に包まれる.
祭りのようなハレの時間があるから,日常(ケ)の時間にも色合いが宿るというものだ.

祭りは,その歴史の長短や規模に関わらず,地域やまちを否応なく巻き込むイベントだ.
実行委員会を構成するメンバーはまちの多様な組織から参加している人たちだし,祭りの会場や公道の使用には持ち主や警察等の許可が必要で,出店があればその関連業者との連携が必要だ.多くの人たちを集めるには町内会などの協力も必要になる.祭りの開催には多様な人たちの協力が必要になる.ポジティブに考えれば,多様なまちの人たちをつなげる役割を担っていると言えるだろう.

歴史の長いものになると,開催する意味は,まちに暮らす多様な人たちの暮らしの時間に根付いている.それは,伝説や宗教を起源とした祈りや鎮魂の時間であったり,流れ続けている日常に対する非日常の演出であったりする.
いずれにせよ,祭りはそのまちに過去から現在に至るまで流れ続けている暮らしの時間に色を与えるものと言えるだろう.

祭りに高揚するとき,まちはその色を鮮やかに発する.
日常のまちは,そこに暮らす人々と生活の多様性と同じだけカラフルだ.
しかし,祭りは,まちをひとつの色にする.まちが積み重ねてきた祈りや鎮魂,日常に対する非日常が発色する.多様な人たちをつなげることで色がひとつになる.

祭りはまちにとって必要不可欠なものだ.

髙岡 敦史

WRITTEN BY

髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。