定点観測

人類は持続可能か?

コロナ禍の元日のまちは,(おそらく初詣の神社仏閣を除いて)静まり返っていた.
それが2日になると,ひともまちも動き出している.市内の交通量は一気に多くなった.

この数日,世界中の人々が「明けましておめでとう!(Happy New Year!)」と言い合っていることを想像すると,「暦」という公共財のパワーを感じる.
一方,新年が明けようがめでたくない状況にある国や地域もあって,そこで苦しんでいる人たちがいる.紛争や混乱,貧困,疫病は公共財のパワーをあっという間に凌駕してしまう.

スポーツも暦と同じく公共財だ.幾度となくそうしたことに負けてきた.
それでも,暦は巡り続ける.文化としてのスポーツも創造し続けられる.
ただし,条件がひとつだけある.人類がポジティブに存在し続けられれば,だ.問題はSDGsに帰着する.

NHK紅白歌合戦にSDGsをテーマにしたユニットまで登場した.民放各局でもSDGsが当たり前のように取り上げられるようになっている.地球とまちと人の持続可能性は人類共通の課題だから,さもありなん,だ.

しかし,少々ポップに取り上げ過ぎている気がする.
SDGsは,単なるスローガンでもファッションでもなく,文字通り達成すべき具体的なゴールだ.
誰が,何を,どれだけ積み上げればゴールが達成されるのか,を考えなければいけない.

一方,シンクレア・ラプラント(2020)は,医療や社会のイノベーションが確実に進むことを踏まえれば,地球上に生きていける人間の数に上限などない(人類は限界を超えられる)という刺激的な主張をしている.

どちらが妥当なのかは分からない.
しかし,人類が培ってきた文化創造と科学の力は,地球上での人間の存在をポジティブにする可能性を秘めていると思う.文化や科学を人間がポジティブに活かせば,の話だが.

結局,人類が地球上にポジティブに存在し続けるためには,自らが生み出す文化や科学といった公共財をポジティブに活かすほかないのかもしれない.

髙岡 敦史

WRITTEN BY

髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。