定点観測

スポまちニュース批評:スポーツチーム×サステナビリティプロジェクト

パナソニック株式会社がFan Circle株式会社と連携して,「スポーツチーム×サステナビリティプロジェクト」を展開するという.

パナソニックは,男子バレーボール(Panasonic PANTHERS),女子バレーボール(Panasonic Bluebells),硬式野球(Panasonic Baseball Team),ラグビー(SAITAMA WILD KNIGHTS),アメフト(Panasonic IMPULSE),陸上競技(Panasonic Angels),剣道部,サッカー(ガンバ大阪)を抱えている.それぞれ,サステナビリティ活動を行っているのだろう.(各チームのページをみても確認できなかったが…)

このプロジェクトでは,「地域課題を解決し活性化にも繋がるスケーラブルなソリューションを提供し続けていく」ことがゴールらしいが,「スケーラブルなソリューション」ってなんだろう?
具体的には,「スポーツチームのサステナビリティ活動を「見える化」するソリューションの検討、およびその実証」を展開していくということだが,パナソニックが抱えるスポーツチームのサステナビリティ活動を見える化するとは,どういうことだろう.サステナビリティ活動のPRをするということだろうか?それらのサステナビリティ効果を評価するということだろうか?
いずれにせよ,パナソニックのような長年のトップスポーツチームを抱えてきた老舗の大企業がそうしたことをコンサル会社と連携しないといけないとは,どういうことだろうか.

スポーツに地方創生や社会課題解決が期待されるようになって,スポーツ団体をターゲットとしたコンサル事業者が増えたように思う.
そうしたコンサルが生まれるのは,スポーツ団体が地方創生や社会課題解決を期待されているにも関わらず自らアイディアを生み出せないがために,それに乗じてスポーツ団体の予算や国や自治体の補助金を狙いにいける状況が生まれているからだろう.

決してスポーツ地方創生系コンサルが悪いわけではない.需要あるところにビジネスは生まれる.市場原理とはそういうものだ.
スポーツ団体も,これまでスポーツのマネジメントだけに邁進してきたのだからアイディアが出せないのは仕方ない.

問題は,スポーツを活用した地方創生や社会課題解決の取り組みの結果に対して誰も責任を取らない,ということだ.大した成果の出ない取り組みに巻き込まれるのは地元の企業や市民だ.当該地域に立地しない(大都市圏に本社のある)コンサルは責任を取れないし,取らない.スポーツ団体は事業主体として責任追及されるだろうが,丸投げした事業の責任は取れない.
地方都市の活性化や課題解決事業を他地域のコンサルに丸投げしたら,その地域で生み出したお金が域外に流れることになる.その対価として地域活性化や課題解決が実現されるなら良いが,数年で事が成るとは考えられない.果たしてコンサルは何年伴走してくれるだろうか.

まちのサステイナビリティは,まちの課題だ.
スポーツは何らかの貢献ができるだろう.
しかし,まちの課題解決を外部委託していては,まちの中の課題解決力は一向に上がらない.スポーツも,まちも,当事者として知恵と汗と金を出し合い,協業的な課題解決事業を展開する必要があるはずだ.

髙岡 敦史

WRITTEN BY

髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。