定点観測

現代的成人の基準とは?

本日は「成人の日」だ.
この連休中に各地で成人式が行われた.
会場周辺は,朝から色鮮やかな晴れ着やビシッときめたスーツ姿の新成人に溢れていた.

成人年齢が18歳に引き下げられたけれど,岡山市では民法改正後の令和4年度以降の式典は引き続き20歳を対象に「20歳の集い」(仮称)として開催する予定らしい.つまりいわゆる成人式(新成人の集い)は今年が最後,ということだ.なお,成人式の時期や在り方に法律による決まりはなく,各自治体の判断で行われる.

法務省によれば,成人とは民法上,「一人で契約をすることができる年齢」という意味と「父母の親権に服さなくなる年齢」という意味がある.例えば,携帯電話やアパート等の賃貸契約,クレジットカードやローンの契約が親の承諾なしにひとりでできるようになる.これまでは未成年が親の同意なく契約するとそれを取り消すことができたが,今後はこの「未成年者取消権」は適用されないから,自分自身で責任を負う必要がある.また,10年有効のパスポートを取得したり,公認会計士や司法書士,行政書士などの資格を取得したりすることもできるようになる.一方,飲酒や喫煙,競馬などの公営競技に関する年齢制限は,これまで通り20歳のままだ.
なお,選挙権年齢や憲法改正国民投票の投票権年齢はすでに18歳に引き下げられているが,これは公職選挙法や国民投票法の改正を根拠にした変更であり,(政策的な方向性は軌を一にしているが)民法上の成人の年齢引き下げとは直接関係はない.

世界の成人年齢を法務省が調べていた.
圧倒的に18歳が多いが,ネパールは16歳,北朝鮮は17歳,ブータンでは女性だけ16歳になっていたりする.21歳に設定されている国もそこそこある.法務省調べでは21歳以上の国はないようだ.

かつて,社会通念上の成年は,その社会の「一人前」の基準に照らして決められていた.
狩猟採集生活をしていた時代は猛獣が狩れることが基準になっていたし,中世では戦争での戦闘に参加できることが基準になっていた.さて,今の時代の「一人前」とはいつだろう?

自律的に学び続けられる素地が身に付いたとき?
社会の未来を自分なりに描けるようになったとき?
社会課題の解決にコミットできるようになったとき?
インターネット上で生産的なコミュニケーションが成立させられるようになったとき?
法律の規定ではなく,自分なりの成年と成人式や,まちやコミュニティごとに成人式があってもいいかもしれない.

髙岡 敦史

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髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。