定点観測

赤ペン先生の卒論紹介①:テレビとDAZN

卒論指導のついでに,今年の卒論を紹介していく.
今回は,「スポーツ中継における実況・解説に関する研究-送り手側と受け手側の両方に着目して-」.

スポーツ中継が地上波放送と有料放送との間で,送り手側(放送側)の実況・解説の内容がどのように違い,受け手側(視聴者側)が求める内容がどのように異なるか,を明らかにした研究.
地上波と有料放送(DAZN)で放送されたサッカー日本代表の同じ試合を,実況・解説を分析してその内容をカテゴライズした上で,大学生に視聴させ,各内容カテゴリーについて視聴する上での必要度を問うアンケートを実施した.

地上波放送は,分かりやすさを重視しつつ,「目に見えない」情報を付加していく実況・解説になっていて,有料放送は,パフォーマンスやゲーム展開をリアルタイムで描写し,見解を述べつつ,「目に見える」情報に専門的視点から情報を付加していた.
一方,視聴者は,地上波放送に対して「大会そのものの説明」や「過去の日本代表の戦績に対する愛国的回想」,「日本代表を称賛すること」,「日本代表を鼓舞する発言」を強く求めていた.それに対して有料放送に対して求めているのは,「ピッチ上の気候状況」や「ベンチ内」に関する内容に関する情報だった.(地上波放送と有料放送で有意差があった内容)

地上波は,スポーツを熱狂できるコンテンツとしてデザインしており,有料放送は,ゲーム展開の理解力を深め,より本質的に楽しませるデザインをしていたし,視聴者も概ねそのように期待していた.地上波にはゲームにスムーズに導入していく力があり,有料放送にはスポーツに対する理解を深め,目の前で起こる事象の魅力に引き込んでいく力があるかもしれない.

髙岡 敦史

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髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。