定点観測

赤ペン先生の卒論紹介②:バレーボール漫画のすべて

今回は「マンガにおける運動部活動の描かれ方とその変化ーバレーボールに限定してー」.

1950年初版の「アタックNo.1」から2014年初版の「ハイキュー!!」までのバレーボール漫画全10作品・総計157巻,全29,306ページを,描かれているテーマとキャラクターにカテゴライズしてその割合の移ろいを分析することで,バレーボール漫画の中で表現される運動部活動が,時代とともにどう変化してきたかを明らかにした研究.

女子バレーについては「日常」が多く描かれており,男子バレーは「ゲーム」「練習」「勝利」といった競技に関わる描写が多い.それが,現代に近づくにつれて,人間模様からバレーボールをリアルに戦略的に考える描写が増えてくるほか,「敗北」の描写の割合も増えてくる.
また,体罰に関する描写は次第に否定的に描かれるようになってきて,厳しい先輩ー後輩関係の描写も減ってくる.
現代の漫画は,読者が主人公に対して共感できるように描かれている.バレーボールのゲームやパフォーマンスの描写が細かくリアルになってくるのも,敗北が多く描かれるようになっているのも,体罰や厳しい上下関係を否定的に描くのも,現代の社会とスポーツ文化を反映していることが確認された.

髙岡 敦史

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髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。