定点観測

向日葵とスポーツ

小さな向日葵を育て始めている.2日ほど前に発芽した.
(決して,このコラムのネタのためではないことを宣言しておく(笑))

植物を育てることは難しい.
どんな土が必要なのか,どれくらいの間隔で種を蒔けばいいのか,どれくらいの頻度と量の水をあげればいいのか,よく分かってないからだ.
分かってないから,観葉植物すら枯らしてしまうこともあって,苦手意識だけはしっかりと私に根を張っている.それでも,私は向日葵栽培セットを購入した.

世の中には,スポーツが嫌いという人が一定数いる.
運動・スポーツ嫌いが生まれる原因に関する研究は多い.その原因は,運動が苦手だとか,苦手さから劣等感を感じるとか,スポーツをすることのメリット(効果)を感じられないとか,家族(特に親)の愛好度が低いとか,そんなところだ.

苦手意識が原因で嫌いになるなら,運動上手にすればいいという結論が導き出せるが,それは簡単ではない.体育の先生は一流のコーチではないし,スポーツ選手でもない大人はわざわざスポーツ指導を受けようと思わないからだ.
だから,「苦手だから嫌い」という意識を「苦手だけど好き」という意識へ変えることが必要になる.いまの私の植物栽培に対する意識と同じものだ.

実は,いま育てている向日葵は,種や小さなプランターだけでなく,土もパッケージされていて,植え方と育て方の説明書まで付いていた.栽培下手に優しい商品だ.
では,スポーツ嫌いな人に優しいパッケージとはなんだろう?最適なシューズとウェア?心地良く運動できる施設?運動説明書?・・・ちがう気がする.

もしかすると,向日葵栽培セットは,「苦手だからまた枯らしてしまうかも,育てるのはやめておこう」という意識を,「苦手だけど育てられるかも」に変えてくれたのではないだろうか.苦手意識は相変わらずあるけれど,明らかに「育てるのはやめておこう」というエネルギー(阻害力)が小さくなった.

「わたしにもできるかも」と思えることは大切なのだろう.
運動・スポーツが好きな人,やってみようと思う人を増やすには,「苦手なままでもできるかも」「よく分からないけど楽しいかも」と思えることが必要かもしれない.「苦手だから」を「苦手だけど」に変えるデザインが必要だ.

髙岡 敦史

WRITTEN BY

髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。