定点観測

認知バイアスだらけだった

8月6日,日本国内の一日の新型コロナウィルス新規感染者数が,2日連続で15,000人を超えた.
「おぉ,すごい数だ」と思った矢先,今まで,全国の合計数を気にしたことがなかったことに気付いた.

他国から入ってくる情報は,アメリカ国内の一日あたり25万人,イギリス国内で46,000人といったもので,「すごく多いなぁ」と思っていたが,日本国内の情報については,東京都や大阪府のような大都市圏の数字と,地元・岡山の数字しか気にしていなかったのだ.

わたしたちは,自分自身に関わりのある情報に目が行きがちで,その情報こそ重要だと感じ,遠くなればなるほど,ぼんやりとしか見なくなる.「自己関連効果」という認知バイアスだ.日本に暮らす私は,岡山の情報にまず目が行き,その後に感染拡大がまず始まる東京都に目が行っていた.
また,岡山と東京や大阪はまったく違う地域だと認識しているのに,アメリカやイギリスをまるっとひとつの国としてしか認識せず,ニューヨークやロンドン,その他の地域に注目しないのは,自分の所属する集団に比べて他の集団の同質性を高いものとみなす「外集団同質性バイアス」だ.社会科学者として,マクロな視線とミクロな視線の両方を持っていると自認していたが,見事に認知バイアスを持っていたのだ.

まちづくりの取り組みは「わがまち」について考えることからスタートするから,わがまちのまちづくりに関連する情報にしか目が行かなかったり,他地域のまちの取り組みを単純化してしまう.そうして,わがまちに閉じたまちづくりや,先進事例の表面をなぞっただけのまちづくりが展開し始める.
認知バイアスから自由になり,広域圏の状況や他地域の取り組みといった外部環境に関する情報を仕入れることができれば,もっと妥当なまちづくりが構想できるだろう.

猛威をふるうコロナ禍第5波で私自身の認知バイアスを発見できたことは大きな収穫だ.
収集する情報の多様性と解像度をもっと上げようと思う.

髙岡 敦史

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髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。