定点観測

スポーツがもたらした長雨?

長雨が大きな被害をもたらした.その合間の一瞬の晴れ間.

気象庁によれば,最近10年間(2011~2020年)の1時間降水量(毎正時における前1時間降水量)50mm以上の年間発生回数(約334回)は,統計を取り始めた最初の10年間(1976~1985 年)の平均年間発生回数(約226回)と比べて約1.5倍に増加しているという.

このデータは収集期間が短いため,地球温暖化が原因かどうかは分析できないとのことだが,野村総合研究所のレポートによれば,人類による温室効果ガス排出が地球温暖化の原因になっていることは間違いないようだ.気温上昇が降水量の増加につながっているとすれば,度々訪れる豪雨災害も無関係ではないように思える.

わたしたちのライフスタイルは,地球全体に影響を与え,そしてわたしたちの生活にはね返ってきていると言えるだろう.

では,スポーツに関わるライフスタイルはどんな影響を与えているだろう.
―― スポーツウェアに多く使用されるポリエステルは化学繊維だ.シューズやスポーツ用具にも多くの化学繊維が使われている.
―― そして着古されたウェアや履きつぶされたシューズ,使い古されたボール等の多くは廃棄される.
―― 太陽光発電のような再生可能エネルギーで自家消費発電しているスポーツ施設はほとんどない.
―― 広い体育館の冷暖房は効率が悪そうだ.スタジアムを煌々と照らすナイター照明の電力消費も大きいだろう.
―― 温水プールは24時間水を循環させていて,多くが水温を保つためにボイラーを動かし続けている.
―― 多くの大規模スポーツ施設は郊外にあって,利用者の多くが自家用車で行き来する.

これらのことが地球環境にどれくらいのインパクトを与えているのか,算出する術を私は持たない.
スポーツ以外の産業・生活領域と比べて,スポーツのインパクトが大きいのか小さいのかも分からない.スポーツにまつわる温室効果ガス排出量に関する研究を待たなければいけない.
しかし,スポーツが重大な影響を与えていないとしても,対策を講じなくてもいいということにはならないだろう.

人類はスポーツという文化を長い年月をかけて発展させてきた.それに伴って,スポーツビジネスも,スポーツを支える施設や設備,器具,用具,ファッションの開発等のスポーツ産業も巨大な産業になった.運動・スポーツを通した心身の健康増進もその需要は留まることがないから,次から次へと新しい運動法が開発され続けている.

スポーツの無限の拡大は,限りある地球環境と矛盾する.
地球にやさしいスポーツ,エコなスポーツ,サステイナブルなスポーツを考える時期に来ている.

髙岡 敦史

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髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。