定点観測

落語とスポーツ

笑福亭仁鶴さんが亡くなった.

幼い頃,カセットテープで落語をよく聴いていた.
私にとって仁鶴さんは,桂米朝さんや桂枝雀さんと並ぶ落語家を代表するような人だ.軽妙で笑いのポイントが止め処なく押し寄せる話芸は,しっとりした米朝さんの古典落語や,ねっとりした枝雀さんしかできない独創落語とは違い,気負わず気軽に聴けるエンターテインメントだった.

国内の論文検索サイトで「笑い」が論文タイトルに含まれるものを検索すると4,000件も出てくる.
様々な研究があるが,概ね笑うことは心身にいい影響があるようだ.作り笑いでも効果があるという研究すらある.

そこで疑問が湧く.
落語で笑うことと,スポーツをしながら笑うことは違うのだろうか?
なお,論文タイトルに「スポーツ,笑い」が含まれるものを同じサイトで検索すると14件しか出てこない.

増山・勝山(1992)によると,落語・漫才・CMの笑い刺激から得られるイメージは,(1)直感的↔論理的因子,(2)きらい↔好き因子,(3)攻撃的↔平和的因子,(4)リズミカルでなさ↔リズミカル因子,(5)しぶさ↔若々しさ因子,(6)あっさり↔しつこい因子で説明できるという.
多くの知見が得られた研究だが,結論のひとつを挙げれば,落語は「直感的で,好きで,平和的であるほど」笑えるものになり,漫才は「論理的で,好きで,攻撃的であるほど」笑え,CMは「直感的で,好きで,攻撃的であるほど」笑えるらしい.

楽しいスポーツには笑いが溢れるはずだ.
スポーツの中の笑いはどのような刺激から生じるのだろう.そして,どんな効果があるのだろう.
スポーツ活動の中の笑い,スポーツ観戦の中の笑い,スポーツボランティアやスポーツ指導の中の笑いは,それぞれ意味や効果が異なりそうだ.
逆に,笑いの生まれないスポーツ活動とはどのようなもので,どんな負の効果があるだろう.
「?」は尽きない.

髙岡 敦史

WRITTEN BY

髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。