定点観測

まちを変える、まちが変わる②:変容の連鎖

まちを構成する要素(人間,人工物,自然,システム,文化)はバラバラに研究・開発されているが,それではまちそのものは説明できない.

まちを構成する要素は互いに関連している.
例えば,人間と人工物が交わるところに建築デザインや工業デザインが生まれ,人間と自然が交わるところに一次産業に関わる農学,水産学,林産学,防災科学などが生まれて,その関係性を理解しようとしている.自然と人工物が交わると環境へのインパクトを抑える技術開発の必要性が生じてくる.また,システムは他のすべての要素と交わるところに法制度を提供するし,文化は人間と生活環境としての人工物や自然との関係の中で育まれ,システムと人間の文化的営みによって振興される.

つまり,まちそのものを捉えるには,まちを構成する要素間の関係(ネットワーク)を捉える必要がある,ということだ.具体的に言えば,「どの要素を変えれば,連鎖的にどの要素がどう変わるか.そしてその変化はまた別の要素をどう変えるかを捉える」ということだ.

各要素を研究している個別学問が連携しない内は,変容の連鎖は捉えられない.まちを理解することは,人間ー人工物ー自然ーシステムー文化の変容の連鎖を理解するということであり,つまり,まちを変えることとは,変容の連鎖を意図的に引き起こすということだろう.

では,まちを変える実践は,どの要素からスタートし,どういう連鎖をたどることができるだろうか.次回から考えていきたい.

(まちを変える、まちが変わる③:変容の連鎖を引き起こす に続く)

髙岡 敦史

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髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。