定点観測

まちに必要なエネルギー

地域活性化やまちづくりには求心力と遠心力が必要だ,と講演の機会を頂くたびに提案している.

人口減少・人口流出が進む昨今,どの自治体でもツーリズム推進やシティ・プロモーションによる交流人口・関係人口の増加が総合戦略や総合計画の目標に掲げられていて,地域の外に目が向いている.

しかし,そこに暮らす人たちが暮らし続けたいと強く思わないまちに,外の人が魅力や価値を感じるだろうか?と思うのだ.
まちを変えるのは「よそ者,若者,バカ者」だとよく言われる.昔からまちに暮らす人たちにとって,そのまちの風景や文化は「あって当たり前のもの」だから,他のまちにはない固有の価値や魅力に気付きにくいけれど,よそ者は他の地域と比べる視点を持っていて,若者は時代の最先端の価値観を持っていて,バカ者は全く新しい価値を生み出せる,ということだ.

本当によそ者,若者,バカ者にまちを変えることができるのだろうか.
よそ者,若者,バカ者ができるのは,そこに昔から暮らす人たちに,まちの価値や魅力を再発見するための刺激を与えることなのではないだろうか.そして,まちを根底から変えることができるのは,まちの根底を形成しているまちの人たち自身ではないだろうか.

求心力と遠心力には順序があるのではないかと考えている.
求心力が先に高まり,それをエネルギー源にすることで遠心力が生み出せる.

まちの求心力とは,そこに暮らす人たちの絆と協働・共創の力(ソーシャル・キャピタル)を基盤にした魅力・価値づくりと経済活動の活性化(産業振興と経済循環の促進)だ.
そうした力が,まちの遠心力としての魅力伝播の力(きちんと届くシティ・プロモーション)を生み,その結果,他地域の人たちを引きつける(域外からの貨幣流入,交流人口・関係人口の増加).

求心力から生まれた遠心力がまちにポジティブな効果を生み出すと,さらに求心力が高まるだろう.そしてさらに大きな遠心力を生む.
こうした求心力と遠心力の循環,スパイラルアップを生み出すのが,地域活性化やまちづくりの目指す姿ではないだろうか.

という話を,今夜する

髙岡 敦史

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髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。