定点観測

お月見する行為規範と感性

今日は十五夜だ.

秋らしい風物詩だが,考えてみると不思議な風習だ.
たくさんの人たちが月を見上げる.きっと雲に隠れていても一度は月を探すだろう.そして,お団子を食べる.

これほど広く共有されて実行されている風習は,年末の年越し蕎麦とお正月のお節料理くらいではなかろうか.日頃,伝統的な風習を意識して生活していなくても,十五夜の満月とお団子は違和感なく受け入れられる.

なぜだろう?と問うたところで解答する知識を持ち合わせていないが,中秋の名月が美しく,季節の節目の風情を感じながらお団子を食べるイベント感が楽しいからかもしれない.年越し蕎麦やお節料理もイベント感と美味しさの相乗効果がありそうだ.

美しさや楽しさ,美味しさは感性だ.
十五夜のお月見という風習は,それを毎年行うという「行為規範」だが,それを支えているのは感性である.
スポーツやまちをめぐる「こうするものだ」,「こうした方がいい」,「こうしてはいけない」という行為規範は,得てして論理的な正しさや法制度によって正当化される倫理によって支えられるが,それ以前に,美しさや楽しさといった感性によって支えられたら,もっと自然に,広く共有されるのではないだろうか.

そのためには,スポーツやまちの美しさや楽しさに鋭敏になっている必要がある.そのための学びは,学校の図工や美術,体育や音楽の時間にあったはずだ.もし,美しさや楽しさに鈍感になっているとしたら,学校教育から変える必要があるかもしれない.

髙岡 敦史

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髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。