定点観測

森は種から,まちは言葉から

どんぐりがぼとぼと落ちてくる季節.
木の根元にはたくさんのどんぐりが転がっていて,全部から芽が出たらあっという間に森になるな,と想像した.(公園だから掃除されてしまうけれど)
種をたくさん落としても,木に育つものはほんの少しだけ.植物は実直でひたむきだ.

まちづくりも,そういうものかもしれない.

まちづくりのための取り組み(事業)の中で表れてくる一人ひとりの一つひとつの言葉は,まちという森を育てる上でごくごく小さなものだ.しかし,何気なく発した言葉が事業を頓挫させ,まちづくりの機運を破壊することもある.事業の成功とまちづくりの推進に寄与する言葉を選択し続ける必要があるだろう.

どんぐりは,芽吹くことを期待してただひたすらに種を落とす.
そして,長い年月をかけて森を育てる.
まちづくりも,各事業がまちづくりに向けて芽吹くことを期待して,ただひたすらに小さな言葉を積み重ねる必要があるだろう.

積み重なった言葉は,共通理解を形成し,長い年月をかけてまちの物語を織り成す.
森が種から生まれるように,まちは言葉から生まれる.

髙岡 敦史

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髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。