定点観測

投票参加と政治参加

岡山市長選挙が始まっている.
平成29年10月に実施された前回の市長選の投票率が28.35%と低迷したことを受けて,SNS上では,#こられー岡山市長選挙 というハッシュタグで投票を促す運動が起こっている.

この運動がどちらの陣営から生まれたものかは定かではないけれど,政治参加の低迷が地域課題として社会運動の対象になってしまっている時点でかなり危機的状況だ.

投票参加についての研究は多くあって,概観することは難しいけれど,最も代表的な政治参加研究である蒲島(1988)岡田(2003)による研究や,これまでの研究を踏まえて時系列的に多変量解析した飯田(2010)によると,投票率は次の条件と関連しているようだ.

・政治関心・政治的義務感・政治的信頼・政治満足・政党支持・地域愛着度・年齢の高い人や農林漁業従事者,町村居住者は投票参加可能性が高い.(蒲島研究)
・権威主義的で垂直的な人間関係に価値を置いている人は投票参加可能性が高い.(岡田研究)
・消費者物価指数の上昇は投票参加の上昇をもたらすが,80年代後半のバブル期のような良好すぎる経済状態は投票参加意欲を減退させる.(飯田研究)
・無党派層の割合の増加は投票参加の低下をもたらす.(飯田研究)

この乱暴なまとめは,個人の投票参加の研究と投票率の研究が混在したものだが,ざっと見渡すと,組織から比較的自由なライフスタイルで都市部に暮らす若い世代の投票参加の可能性が低いようにみえる.ライフスタイルを変えることは難しいが,政治に対する意識を変容させていくことは必要だろう.
そういう意味で,市民の投票参加を促進するには,選挙期間中の運動より,政治と地域に対する意識をポジティブなものに変容させていくことが必要になるはずだ.例えば,政治不信や政治満足の低下が無党派層を生み,投票参加の低下をもたらすのだとしたら,問題は政治不信等にあることになる.投票率の低迷問題の根は深い.

政治に関心がなくとも,政治の影響は必ずある.
多数決という近代的なシステムに不毛感はあっても,投票しないこと(あるいは白票を投じること)は権利の放棄だ.しかし,政治参加は

髙岡 敦史

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髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。