定点観測

投票率とポピュリズム

期日前投票に行ってきた.
報道によると,13日間の期日前投票期間で70,534人(前回の市長選から62.5%増)が投票したという.有権者の12.1%に当たる.感染拡大が収まっていてすべての宣言や措置が解除されているとはいえ,やはりコロナ禍では期日前投票率が上がる傾向にあるようだ.過去最低の28.35%を記録した前回の投票率よりは高くなるかもしれない.

2期8年の間,着実に政策を積み上げてきたもののアピール下手な現職候補と,若年層や政治無関心層に刺さりがちな耳障りのいい政策を予算的根拠なく散りばめ,現職候補の市政を声高に批判して活発にアピールしている新人候補の対決.
選挙学の専門家ではないから,あくまでも素人考えだが,投票率が35%を超えてくると新人候補に有利な状況が生まれてくるのではないかと予想する.SNS上での支援者による対立候補への敵視投稿や花火騒ぎで,若干荒れ気味の選挙戦のように感じるが,荒れれば荒れるほど,衆目を引き投票率は上がるだろう.

一般論として選挙の投票率は高い方がいいが,都市ビジョンや政策の中身の比較ではなく,大衆的人気で結果が決まるとすれば,それは大衆迎合のポピュリズムだ.投票参加を促す運動がSNS上でも拡がっている.投票率を高めることは極めて重要なことだが,その運動がポピュリスト候補から発信されている場合は注意した方がいい.
なお,ポピュリズムの一般的な特徴は,下記のようなものがあると言われている.
・政治・経済・文化エリートに対して反旗を掲げる傾向にある
・エリートに対して自身を大衆の代表であると演出する
・指導者のカリスマ性を強調する傾向にある
・指導者の敵を設定し,人々の敵であるように演出する
・争点を極端に単純化する傾向にある

低い投票率で決する選挙結果も,ポピュリズムによって決する選挙結果も,どちらもポジティブなことではない.しかし,それでも市民は(解職請求権は認められているが)受け入れなければいけない.
明日,結果が判明する.このまちの近未来の一部が決まる.

髙岡 敦史

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髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。