定点観測

高校が変わる,まちも変わる?

今日は,某高校の学校評議員会で学校訪問だった.

学校評議員という制度は,校長が必要に応じて学校運営に関する保護者や地域の方々の意見を聞くためのもので,ちょうど20年前の平成13年に導入された.
この高校でも,PTA役員経験のあるOB・OGや地域の関係者,大学教員等が評議員に委嘱され,年に数回,学校の経営や教育活動について意見を述べている.

高校は,本年4月に中央教育審議会が公表した「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~(答申)」に基づく改革に着手したところだ.
高校の改革について特に大きなものは,大雑把に言えば,以下の2点だ.

・「スクール・ミッション」に基づいて「スクール・ポリシー」を策定・公表すること
学校の社会・地域における存在意義や役割,使命(スクール・ミッション)を定義しなければいけない.その上で,「育成する資質・能力に関する方針」と「教育課程編成・実施の方針」,「入学者の受け入れ(つまり入試)に関する方針」の3つから成るスクール・ポリシーを策定し,今年度から受験生に示さなければいけなくなった.
スクール・ポリシーは,順に,大学で言うところのディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシー,アドミッション・ポリシーに当たる.高校も大学のようになってきた,というわけだ.

・ICTの活用(GIGAスクール構想)によって個別最適化された学びを実現すること
ノートPCのようなICT端末をひとり一台持たせ,各自の学習進度等を効率的に確認したり,フィードバックをこまめにしたり,クラウド等を活用して蓄積・共有していくことになっている.この学校でも,すでにChromeBookが一台ずつ生徒の手に渡っている.購入が自己負担だから家計への負担は大きいだろう.

また,来年度からの新しい学習指導要領の全面施行に伴って,「総合的な探究の時間」が本格的に始まる.この高校ではすでに,周辺地域の自治体や企業と連携したPBLが始まっていて,試行錯誤している.

俯瞰してみると,高校教育は地域連携・実践化・個別化に向かっていると言えるだろう.これまでは,受験対策のための効率的な学習指導が中心だったが,今後は,高校生がまちに出て学ぶことが多くなり,一人ひとりの課題に沿った学習が仕組まれるようになる,というわけだ.

しかし,人はひとりでは学べない.協同的な学びはもう使い古された言葉だが,やはり重要だ.そして,高校生を受け入れるまちの側も,高校生とともに考え,学んでいく力が必要になるだろう.変わる必要があるのは,高校だけではない.

髙岡 敦史

WRITTEN BY

髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。