定点観測
元アスリートは遊べない?
2021.10.16
大学では,講義だけでなく,スポーツの実技を伴う授業を毎週している.
基本的には,学生たちが身体と頭脳を使って学ぶのが授業だから,指導者である私が身体を動かす必要はないのだが,ついつい,授業前や学生の休憩中に動いてしまう.
昨日も,ベースボール型ゲームの教材開発を目的にした実技授業だった.
ついつい,野球部の学生を相手にキャッチボールを始めてしまった.
次第に投げる距離も遠くなり,球速も上がる.
重心,体重移動,身体の捻りと解放,肩甲骨から上腕骨,尺骨・橈骨,指先までの鞭動作のボールへの伝達,それに対する左腕と左手の動き,ボールへの指のかかり,ボールの回転数・・・考えることが増えていく.
そして,夜には肩と肘が痛くなった.
元野球選手ではないし,これから野球選手を目指すわけでもないのに,なぜかトレーニングするモードに入ってしまうのは元アスリートの性だ.キャッチボールしながら「なぜ,こんなことしているんだろう?」と自分に問うのだが,止められない.そして,筋肉や靭帯,腱にダメージを受けてから,「もうアスリートじゃないんだ」と再確認する.こういうことが年に10回はある.
競技スポーツから得られる心理的な集中や自己内対話の快楽は,麻薬から得られる集中力や快感に近いのではないかと思う.競技生活から離れて20年が経っているのに,そして肉体の機能は大きく低下しているのに,ついついトレーニング・モードに入ってしまうのは,他のことでは代替できない集中や快楽を得られるからだろう.
本来は,トレーニングではなく,キャッチボールそのものを楽しむだけでいたいのだが,まだよく分からない.それが分かれば,スポーツを趣味にすることができるはずだ.