スポーツと地域

山を走ろう! 〜TRAIL RUNNINGの世界へ〜

 地元の海、山、川をスポーツの舞台に!ー。地域にあるがままの自然を使ってスポーツまちづくりを進められるのがアウトドアスポーツの最大にメリットです。あなたの町にもスポーツに活用できる地域資源が眠っているのでは?そのヒントとして、現在、人気上昇中のトレイルランニングについて、岡山県トレイルランニング協会事務局の青木さんに、魅力を語ってもらいました。

 みなさん、TRAIL RUNNING(トレイルランニング)って知ってますか?TRAIL(トレイル)とは、不整地・未舗装路のことをいい、その不整地や未舗装路を走ることをトレイルランニングといいます。ひとくちに未舗装路といっても種類はさまざまで、林道、砂利道、登山道などを総称したものが大きなくくりのTRAILと考えていただいていいです。一般的なハイキングコースや登山道を使用してトレイルランニングをします。

TRAIL RUNNINGとの出会い

 近年マラソンブームやアウトドアブームに乗り、このトレイルランニングの人気も高まり、テレビ番組の取材や番組でも取り上げられることが多くなってきました。私も数年前にテレビ番組でみたトレイルランニングの特集で、リュックを背負いながら険しい山岳地帯をTシャツと短パンにランニングシューズという出で立ちで昼夜を問わず駆け抜けるランナー達を見て「なんなんだこのエクストリームな世界は!!」と衝撃を受けたのでした。

 ちょうどそのころ職場の同僚と休みの日によく登山をしており、山に登ることは慣れていたものの、山のあのしんどい登りや岩場のトレイルを数リットルの容量しかない小さなバックパックで、しかもランニングシューズで何十キロも走り続けることなんて想像がつきませんでした。しかし、そのトレイルランニングをしているランナーがワイルドで男らしく、自分の体力と精神力の限界に挑む姿や表情が脳裏に焼きついてしまったのです。そして一緒に登山していたその仲間も同じようにトレイルランニングを知り、魅了され、その世界にハマることになります。

 いつのまにか二人の登山で使っいた30リットルのバックパックは10リットル弱のトレランザックになり、足首までがっちり保護されていた登山靴はローカットで片足300gほどの 軽量なトレイルランニングシューズに変わっていました。

TRAIL RUNNINGの醍醐味

 トレイルランニングをはじめると、普段のロードランニングが以前と違い物足りなく感じるようになりました。もともと走るのはそれほど得意ではなくロードのマラソン練なども目標タイムなどを特に決めずにダイエットがてら続けている程度でした。

 でもトレイルランニングは違ったのです。それまで歩いていた登山道のフラットな所やくだりを軽く走ってみることで、ロードのランニングとはまったく違う体の感覚や心地よさを感じたのです。速いとか遅いとか距離やらタイムやらもはやどうでもよくなり、ただ自分が走りたいだけ走りたいように走る、そのシンプルな楽しさと感じたことのない解放感に包まれたのでした。

 そしてもうひとつ、ロードとは違って山の中では、あたりを見回してもだれもいない、耳を済ましても人の声も車の走る音も聞こえない「たったひとりになれる場所と時間」を味わうことができ、「なにも考えなくていい無の境地」に至れるのです。よくトレイルランニングが趣味というと(知らないひとが大半なのですが)ただでさえ登り下りのきつい登山道をなんで走ろうと思うのか理解できない、と言われることが多いのですが、自分にとっては日々の生活のなかでそういうトレイルランニングでしか味わうことができない特別な感覚が、つねに自分が自然体でいるために欠かすことのできない、ライフスタイルの一部にまでなっています。

TRAIL RUNNINGの楽しみ方

 私と同じように、トレイルランニングを趣味やライフスタイルのなかで楽しむ仲間がここ2〜3年でとくに増えてきたように思います。先に書いたように近年のアウトドアブームやマラソンブームの盛り上がりもあり、テレビや雑誌などで特集が組まれたり、専門のサイトや道具を取り扱うお店なども増えてきました。2019年には岡山県でもトレイルランニングを嗜む有志が声をあげ、岡山県トレイルランニング協会(以下OTRA)という団体を立ち上げました。

 OTRAでは、県内の各トレイルランニング大会やイベントが安全に行われるよう互いに情報共有したり、協力体制をとることでより地元地域に根ざし、 持続して開催していけるよう活動を行っています。

 2020年の新型コロナウイルスの世界的なパンデミックにより、これまで行われてきた各地域でのスポーツイベントは軒並み中止や無期限の延期に追い込まれました。県内のトレイルランニング大会も同様で、2020年度だけでなく、2021年度もいまだ開催できない状況下にある大会がほとんどです。しかしこれまで開催してきた地域や山域とのトレイルランナーの交流や活性化の火を消さないためにも“コロナ禍でのトレイルランニングの楽しみ方”やWEBサイト、 SNSなどを使っての情報発信を模索しながら取り組んでいます。

 今後、すこしづつ県内でもトレイルランニングの大会やイベントが再開してきます。OTRA内でも「今年は形を変えてでも開催したい」という熱をもった大会関係者や想いを同じくするランナーが動き出しており、OTRAや各大会からの発信は次第に増えてくると思います。トレイルランニングは、自分の力を試すそういった大会への参加だけでなく、従来の一般的な登山から派生した新しいスタイルとして、「すくない荷物でより遠くまでいける」手段としての選択肢にもなりえると思いますし、私のように日々の生活のなかで欠かすことの出来ないライフスタイルの要素として生涯を通して楽しめる最高のアウトドアアクティビティーだと思っています。

 もしトレイルランニングに興味をもったり、やってみたいと思われたら知りあいのランナーさんに声をかけて近くの公園のハイキングコースを一緒に走ったてみたり、よく行く山があればすこし荷物を減らして走れる格好で行ってみたり、トレイルランニングにまずは触れてみてほしいと思います。(もちろん山に入る際は安全であることが最優先ですが!)

 OTRAの協会HPでは、県内で参加できる大会やイベント情報をまとめて公開していますのでそちらで探すこともできます。http://okayamatrailrun.com/ にアクセス、カテゴリーの中にある《 イベント 》や《 おすすめルート紹介 》などで最新情報がわかります。また、トレイルランニングする際のマナーや楽しみ方も同サイトで みることができます。「岡山県トレイルランニング」で検索すればOK!

 

 私たちのいる岡山県は、県南部には気軽にアクセスできる低山も多く、県北部は有名な蒜山三座や那岐山系をはじめ、1000m級の山々が数多くそびえ登山やトレイルランニングを楽しむには絶好のロケーションにあります。自分のスタイルや好みにあったトレイルランニングのやり方を見つけられればもっと精神的にも肉体的にも豊かな人生が待っていると私は思います。これまで遠くからみるだけだったあの山を一度走ってみませんか? TRAIL RUNNINGの魅力的な世界が、稜線の先に無限に広がっています。