スポーツと栄養

野山を走る薬剤師 立花さんのお薬コラム①「その飲み方間違っていませんか?」

 スポーツを楽しむ中で、やむを得ず薬に頼ったり、日常的にサプリメントを口にしたりしている人は多いはず。でも、その薬やサプリメントが実際、体にどんな影響を及ぼしているのか気になりませんか?本当に正しい使い方ができているでしょうか?岡山県トレイルランニング協会理事で、スポーツファーマシストの立花義章さんの話に少し耳を傾けてみましょう。(岡山県トレイルランニング協会HPからの転載です)

 岡山県トレイルランニング協会(OTRA)理事の立花です。

 コロナ禍で大会等の中止が相次ぐ中、OTRAからランナーの皆様に何かしら発信できないか?ということになり、私の専門分野である「薬」に関する事について書かせていただきたいと思います。

 今回のテーマは「痛み止めと胃薬」

 なおこの内容は、以前に私自身のブログに記載したものに加筆して載せていますので、内容が重なっている部分があることをお許しください。

 私自身こういったお話は初めてではありませんし、スポーツの現場でも対面でお話しすることがありますので、その中での話題を少しお話し致します。

 今年(2020年)は中止になりましたが、もともと「おかやまマラソン」のEXPO会場で、毎年「お薬なんでも相談」を実施しています。アンチ・ドーピング関連の話は別として、よくあるお薬の相談は

 「〇〇を飲んでいますが、走ってもいいですか?」

 その〇〇に該当するお薬には、色々なカテゴリーがありますが、一番多いのは「痛み止め」です。ここで大体毎年思うことは、痛み止めを飲んでまで「走るな!!」ということです。立場上、直接相談してくださる方には、「走るな!」なんて言葉は使いません。少し柔らかく「あまりおススメしません」という言い方にはしますが聞いてくれないことが多いです。でも、痛み止めを飲まなきゃ走れないなら走らないでください。

 長距離を走ることで肝臓にも負担がかかります。そしてお薬は肝臓で代謝されます。お薬を飲むことでさらに肝臓に負担がかかり疲れが増すと言う事です。肝臓という臓器はものすごく我慢強い臓器です。負担をかけ、負担をかけ、かけ続けても、じっと我慢して働きます。ところがもう我慢できないとなったら一気におかしなことになってしまいます。不可逆的な状態に陥ることもあります。そこで嘆いても、もう元には戻りません。

 そうならないためにも無理は禁物ですし、必要のないお薬を摂るべきではありません。そうでなくても痛み止めで胃腸障害を起こしやすいのです。疲労が蓄積するトレランやマラソンなら尚更です。この弊害をなくすために胃薬を飲む方もおられますが、これも間違った使い方です。途中で痛くなるからという理由で痛み止めを飲んでスタートするのもどうかと思います。

 走らなければ痛みはない場合も、飲まなくてもいいはずの痛み止めを飲んで・・・。本来なら起こらないはずの胃腸障害のために胃薬を飲む・・・。

 おかしいと思いませんか?

 そして故障の度合いが痛み止めでうやむやにされ、怪我の悪化も招きかねない。プロランナーやトップアスリートなら話は別ですがあなたにとってトレイルランニングやマラソンはそこまでして走らないといけないものなのでしょうか?もちろん大会の途中で発生した我慢できる痛みなら、様子を見ながら走ってゴール後に診てもらうということは、有りかと思いますが…。

 薬は使い方によっては、毒にもなります。どうかいつまでも健康に走り続けることが出来るように身体をいたわってください。痛いのは身体が休みたいと言っているサインです!

次回は、「エナジードリンクについて」と題して書き綴りたいと思います。

立花義章

WRITTEN BY

立花義章
たちばな・よしあき 全国スポーツファーマシスト連携協議会代表。 備前市にある「いんべ薬局」で働く薬剤師。スポーツファーマシストの資格を持ち、アンチ・ドーピング活動に力を入れています。 自身もマラソン・トレイルランの愛好者。