“部活動の地域移行” 再考③:コンセプトは?
部活動の地域移行論議のひとつの発端は,教員が部活動に忙殺されていて働き方改革が必要だ,というところにあった.
スポーツ庁が2018年3月に発出した「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドラインについて」は,2018年のOECD(経済協力開発機構)のTALIS(Teaching and Learning International Survey:国際教員指導環境調査),2019年の「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」とリンクしている.
ガイドラインは各都道府県や学校長に方針を策定することを求めたから,2018年と2019年,教育委員会と学校はそれへの対応に追われた.
そして,2020年9月に「学校の働き方改革を踏まえた部活動改革」が示され,2023年度以降,休日の部活動を段階的に地域移行する方針が示された.その勢いのまま,2021年1月には「地域運動部活動推進事業」の公募が始まり,休日の ”地域部活動” の全国展開に向けた検証が始まった.
岡山県教委のこれらすべての対応に関わらせて頂いているわけだが,2018年からの度重なる方針発出の「突然感」や「矢継ぎ早感」は驚きを通り越して,苦笑するほどだ.
教員のライフワークバランスの実現はとても大切なことだし,部活動指導に忙殺されて授業研究や授業準備が疎かになるというのは,教員の職務上,本末転倒だ.そういう意味で,「部活動は今後どう展開されるべきか」という問いは不要なものではない.
そして,少子化や都市部への人口流出に伴う一部の学校の生徒数減少は,特にチームスポーツの運動部活動の廃止をもたらしている.体罰や不合理な活動も残っていて,どう考えても部活動の改革は必要だ.
しかし,「部活動は今後どう展開されるべきか」という問いへの解答は「地域移行」で合っているのだろうか?
少なくとも,地域移行は方法のひとつでしかない.共有すべき改革のコンセプトは国からは示されていない.
(次回へ続く)