定点観測

スポーツまちづくりを車に例えてみた

世の中には,「車の両輪」と呼ばれるものがたくさんある.
ふたつの事柄がどちらを欠いても役に立たないほど密接な関係にあることのたとえだ.

「スポーツまちづくり」は,スポーツの振興とスポーツによる地域振興を統合する概念で,スポーツまちづくりという「車」は,スポーツの振興とスポーツによる地域振興という車の両輪で動く,と考えている.

スポーツの振興だけが孤立して頑張ろうとすると,資金調達は補助金かスポーツビジネスの成功に依存する.人口減少社会において税収は減少確定で,スポーツサービスの売買に閉じたビジネスは期待薄だ.まちの活力が減退すると,スポーツ振興に投入される資源も減少する.
一方で,スポーツによる地域振興だけが孤立して頑張ろうとすると,スポーツは地域振興に利用され,消費され,痩せ細る.地域振興をドライブさせるエネルギー源だったスポーツの活力が減退すると,地域振興も動かなくなる.

ただ,車は車輪だけでは動かない.

エンジンとガソリンが必要だ(SDGs的にはモーターと電気と言うべきか).
ハンドルとブレーキもないと危なっかしくて仕方ない.
運転手も必要だ(スポーツまちづくりが自動運転になった社会はディストピアな気がする).運転手はたくさんいてもいいけれど,相談しながら運転しないと事故るだろう.
いろいろな運転手が快適に運転できるシートやエアコンも必要だ.
夜道にはライトがいるし,雪道にはスタッドレスタイヤもいる.
衝突防止アラームや衝突被害軽減ブレーキ,万が一の時のためのエアバッグも大切だ.一度の事故(失敗)で即死(事業廃止,廃業)してしまうようでは恐ろしすぎる.

スポーツまちづくりという車に必要な部品がそれぞれ何かを考えると発想が拡がる.メタファー(比喩表現)は面白い.

髙岡 敦史

WRITTEN BY

髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。