定点観測

向日葵とまち

育てている向日葵は,すくすくと育っている.(発芽の頃の記事はこちら
本葉はしっかり大きくなっているけれど,これからどうなるのかよく分かっていない.幹?がまだ伸びて,葉っぱが増えて,その上に花が咲くのだろうか?
向日葵の花が太陽を向くのは知っていたが,まさか花のない葉っぱだけの段階でも,ひたむきに太陽を向くとは驚きだ.向日葵のDNAは葉っぱにも確かにあるらしい.
いずれにしても,この子は疑問と驚きをもらしていて,生活を楽しくしてくれている.

緑の多いまちが好きだ.
緑は,街路樹でも田畑でもいいし,人の家の庭木でも,芝生の公園でも,里山でもいい.とにかく,植物が多いといい.

都市計画上,緑地は重要で,一定の割合で確保されている必要がある.都市緑地法なんていう法律まである.
岡山市内の繁華街の中心を流れる西川緑道公園は,小川と緑が織りなす清々しい空間だ.
しかし,魅力的か?と問われると少々疑問符が付く.西川緑道公園は,単なる心地良い「通路」になっている.
おそらく,空間として「楽しさ」がないからだろう.

環境デザインをけん引してきた仙田満氏は,楽しさが生まれる「遊環構造」という設計手法を提案している.
「遊環構造」とは,動線が循環していて回遊性があり,その動線が安全で変化があり,シンボリックな場と大きな広場を備え,すべての空間がどこからでも入り込めるようになっていて迷っているような感覚がありつつ,ショートカットも可能,というものだ.

西川緑道公園は,小川に沿った緑道だから直線的で循環性がない.人の流れは直線的な往来だから,回遊もしないし迷うこともない.そのため偶然の出会い頭の交流も生まれない.
碁盤の目の街路構造の中にある西川緑道公園に,公園緑地としての楽しさを期待してはいけないのかもしれない.周辺エリア全体が,歩いて楽しい遊環構造を持てば,その中心にある西川緑道公園はシンボリックな緑の広場になるかもしれない.
そんなことを考えていると,まちのデザインを想像するのも,まちの楽しさのひとつかも,とも思えてきた.

まちの緑は心地いい.季節によって表情を変える街路の木々や草花は,一年を通して心地よさをもたらしてくれる.
まちには楽しさも必要だ.歩いて楽しい構造が街路に盛り込まれる必要があるだろう.遊環構造もそのひとつだし,魅力的な路面店や個性豊かな人との驚きの出会いも楽しさをもたらしてくれるはずだ.
そして,まちに疑問を持ったり,未来を構想することも,まちに必要な楽しさかもしれない.

まちに心地よさと楽しさがたくさんあったら,暮らし続けたくなるし,住んでみたいと思う人も増えるだろう.

髙岡 敦史

WRITTEN BY

髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。