定点観測

週末はスポーツだ♪ ・・・不要不急か?

コロナ禍にあっても,スポーツは止まらない.
週末には,中学生や高校生のスポーツ大会が開催されていて,高揚した面持ちの子どもたちの表情は元気をくれる.
地元のプロ・スポーツのホームゲームも有観客で開催されていて,スタジアムに向かうたくさんのレプリカユニフォームの群れは華やかだ.

未知のウィルス感染症が拡大する中で議論すべきことのひとつに,
 「緊急時において,政府は私権や個人の自由をどこまで制限できるか?」
ということがある.
この問いは,少し違う角度からみると,
 「なにが必要至急で,なにが不要不急か?」
と問うこともできる.

スポーツ活動やスポーツ観戦は,スポーツ基本法で次のように権利として規定されている.

「スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは,全ての人々の権利であり,全ての国民がその自発性の下に,各々の関心,適性等に応じて,安全かつ公正な環境の下で日常的にスポーツに親しみ,スポーツを楽しみ,又はスポーツを支える活動に参画することのできる機会が確保されなければならない。」

スポーツ基本法 前文より

このスポーツ権は,緊急時に政府によって制限しうるものだろうか?
「スポーツに親しみ,スポーツを楽しみ,又はスポーツを支える活動に参画すること」は,不要不急だろうか? 

文化芸術活動については,都倉俊一文化庁長官が,今年5月に「文化芸術活動に関わるすべての皆様へ」というタイトルの声明を出した.
その一部を抜粋する.

「これまでの新型コロナウィルス感染症との過酷な闘いの中で明らかになったことは、このような未曽有の困難と不安の中、私たちに安らぎと勇気、明日への希望を与えてくれたのが、文化であり芸術であったということです。
文化芸術活動は、断じて不要でもなければ不急でもありません。このような状況であるからこそ、社会全体の健康や幸福を維持し、私たちが生きていく上で、必要不可欠なものであると確信しています。」

都倉俊一文化庁長官 「文化芸術活動に関わるすべての皆様へ」 より

文化芸術活動は必要不可欠だ,という主張だ.
その理由は「安らぎと勇気、明日への希望を与え」るから,だという.

スポーツも必要不可欠だ,と主張するとしたら,その理由は何だろう.
少なくとも,スポーツ庁から声明は出ていない.

髙岡 敦史

WRITTEN BY

髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。