定点観測

”コロナで中止” からレガシーを

コロナ禍が微妙に収まらないから,夏以降に予定されている各地のスポーツイベントは,開催か中止かに揺れていることだろうと思う.
ご多分に漏れず,関わらせて頂いているイベントの企画運営会議でも「どうしようか…」と頭を悩ませている.

何とか開催したい!と思っている人もいる.難しいだろうなぁと思っている人もいる.
ともすると,開催か中止かで真正面からぶつかりそうだが,『定点観測』の「不要不急 vs 必要至急,かみ合ってる?」で書いたように,どなたも「スポーツも必要だし,感染予防も必要だ」と思っているわけで,ガチのケンカ(コンフリクトの顕在化)には至らない.

何とか開催したい!と思う人は,そのイベントの意義や効果を重要視しているし,難しいだろうなぁと思う人は地域の感染拡大リスクを抑えることを重要視しているわけで,両方正しい.特に,後者は,地域住民の代表になっているような方々に多く,もろ手を挙げて「開催!」とは言いにくい立場にあるだろうから,その苦悩は察するに余りある.
少なくとも,両者が互いの間に最適な落としどころを見出そうとしていれば,会議としてはポジティブだと思う.

およそ開催派の私は,中止するにしても,ひとつでも課題を解決する取り組みをして,来年に向けてイベントをステップアップさせた方がいいと考えることが多い.「何もしない中止」は,課題の先送りでしかないし,中止に意味や意義がないからだ.

むしろ,「意味ある中止」を決断したことが10年後の大きな成果につながるなら,それは「意義ある中止」になるし,中止からレガシーが生み出せるだろう.
大切なことは,中止にどういう意味を持たせるか,ということだ.これはつまり,来年までの間に何をして,どういう成果を出すのか,というロードマップの立案に他ならない.

タダでは転ばない.
七転び八起き.
人間万事塞翁が馬.
精神論ではなく,ロジカルにいこう.

髙岡 敦史

WRITTEN BY

髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。