定点観測

向日葵を育てる/学生を育てる

不定期に報告しているわが家の向日葵.
土が見えなくなるほどもしゃもしゃ葉っぱが大きくなっていて元気な様子なのだが,相変わらずここからどう花が咲くのか,よく分からない.まだ背が高くなるのだろうか?

植物に水をやるという行為は,土に水分を含ませて,根っこの細胞よりも土中のイオン濃度を高めることで,細胞に水分を吸収させることに他ならない.しかし,水をあげているときの心持ちは,向日葵に水を飲ませているようなもので,まさに「育てる」という感じだ.

向日葵を育てる一方で,日々,大学生や大学院生を「育てる」仕事をしているわけだが,過保護な手取り足取りはダメだと考えていて,水すらあげないイメージで仕事している.大学を卒業・修了した後に自分自身で必要なことを集められないと困ると思うから,「必要な水分は自分で見つけて,自分で吸収してね」というスタンスだ.

それでも,学生自身が「水はここにあるはず!」と考えて,指導者に「水ください!」と言ってきたら,水分補給の仕方くらいは教えることにしている.つまり,「このことが分からない.どう調べてもヒントすら出てこない.ヒントください」と言われたら,そのことだけは対応する,ということだ.

こういうスタイルにしておくと,実は,私自身が楽しくなる.
Google先生に尋ねれば大概のことは教えてもらえるこの時代にあって,「どこを探しても…」となるような事柄は,時折,新しい問題の発見であったりするから,「確かに,それはまだ分かってないな」という気づきをもらえるからだ.

だから,卒業論文の指導のような仕事は楽しい.
私自身が分かっていないことを,学生たちが見つけてきて,しかも回答まで出してくれる,というのだから.
むしろ,私が学生たちから水をもらっているのかもしれない.
役得,ということで許してもらおう.

髙岡 敦史

WRITTEN BY

髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。