定点観測

波の研究のようなスポーツまちづくりの研究?

海はいい.
打ち寄せる波の音,匂い,しっとりした海風を浴びているだけでリラックスできる.

ネットで論文検索すれば,波の音に関する研究はずらっと出てくる.
波の音がリラックスさせるということは経験上よく知られたことだが,村上ほか(1995)の研究によれば,ちょうどいい波音の大きさと周期があることが分かっていて,波の音が大きく周期が短いほどα波が減少して快適感が下がり,平均音圧と最大音圧の差が大きく,1/fらぎの減衰幅が大きいほど(α波に変化はないけれど)心地よさを感じさせるらしい.

こうした研究の多くが,海岸工学の研究として展開されていることが興味深い.
ウォーターフロント開発に伴う人口渚の造成が研究をドライブさせているようだ.

同じように,運動やスポーツの身体的・心理的効果に関わる,運動生理学やスポーツ心理学,バイオメカニクス,スポーツ工学(日本機械学会の中の部門として確認できる)のような研究は,スポーツマネジメント研究やスポーツまちづくり研究の基盤になっている.
例えば,園庭や校庭の芝生化が子どもたちの身体活動量や心理にどういう影響を及ぼすか,ということに着目した研究はその典型例だ.心理学や健康科学,運動疫学から芝草研究まで,様々な領域からアプローチされている.

スポーツまちづくりをめぐっては,すでに蓄積されている研究を生かすことができるだろうし,まだまだ基礎研究が必要なトピックもあるだろう.
多様な領域の研究者が参画できる研究フィールドを,スポーツまちづくりの現場に用意することができるかどうか,ということも重要になってくるだろう.そのためには,波音の効果や校庭の芝生化の効果の解明と同じくらい,スポーツまちづくりの重要性や必要性が広く認められる必要があると思う.

髙岡 敦史

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髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。