定点観測

ミニマリストとまち

最近,自転車ほしい欲が大きくなっている.
20年ほど前にボート競技のトレーニングのためにロードバイクに乗っていたから,びゅんびゅんスピードの出る自転車の楽しさは体験済みなのだが,メンテナンスになるべく手間をかけたくないから,がちゃがちゃした変速機はなくていい気がする.そうなると、フリーギアのピストバイクがいいのだろうけれど,ギアがまったくないミニマルな車体をみると,速度や道の傾斜に関わらずペダルの回転数を維持するにはやはり変速機はいるだろうか,自転車を漕ぐことそのものを楽しむならロードバイクかしら…,などと逡巡していて,一向に購入に至らない.

必要最低限のものしか身の回りにおかない「ミニマリスト」が一時期メディアを賑わせた.時間や場所に囚われない「ノマド」というワークスタイルは今や珍しいものではなくなっている.
一方,私は,本は紙のものじゃないとイヤだし,多少なりとも意味を含む物は捨てられない性格だから,ミニマリストにはなれそうもない.また,一度も入ったことのない飲食店にひとりで入るのが苦手だし,土地勘のない地域に立ち入るのには相当強い目的意識(例えば、仕事でどうしても行かないといけないという意識)と勇気を振り絞らないといけないタイプだから,ノマドにもなれない.ネットにつながるノートPCがあればどこでも仕事できているように見えるけれど,仕事している場所は極めて限定的だ.

きっと,ミニマリストやノマドは自分自身の生活を外的環境に合わせられるのだろうと思う.そういう人はピストバイクなのかもしれない.そして私は,自分自身のライフスタイルに合わせて環境を作りたいタイプで,ロードバイクが性に合っているのかもしれない.

新しいことが常に正しいわけではないだろうけれど,進化論的には環境適応するミニマリストやノマド,ピストバイク乗りの方が生存可能性は高いのかもしれない.まちのちょっとした傾斜や風をクランクのちょっとした重さで感じながら,それを受け入れて生きていく.そういうのもアリかも,と思い始めている.

髙岡 敦史

WRITTEN BY

髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。