定点観測

面白い人とまち

新しいことを考え出して,それを実装できてしまう「面白い人」は其処彼処にいるものだ.そして大概,面白い知人をひとり介せば別の面白い人と繋がれる.

そうしてどんどん繋がると,まちの中に面白い人たちのクラスターが見えてくる.
スタートアップ・クラスター,まちづくりクラスター,教育イノベーションクラスター,農業イノベーションクラスターなどなどだ.

面白い人たちが開放的で社交的だから,それぞれのクラスターが閉鎖的になるはずもなく,誰かを介してつながっている.仕事を一緒にすることはないにせよ,誰がどんなことをしているか,人づてにみんなが知っていて,時々食事を共にすることもある.
この関係は,社会ネットワーク理論的に説明すると,推移性が高い関係(友達の友達は友達)だが,比較的親密な関係と言えるだろう.

社会ネットワーク理論は様々な考え方を提供してくれている.
グラノヴェッター(1973)(リンク先はpdf)は,関係性が離れている方が貴重な情報が伝達されやすいと言っているし(一昔前に流行った弱い紐帯理論),これに関連してバート(1992)は関係なさそうなクラスターとつながった方が,その間にある「構造的空隙」(ネットワークの穴)に情報が流れ込みやすくなると言っている.
一方で,クラックハート(1992)は親密な強い友人関係を築いている方が成果が出やすいと言っていて,ウッツィとスピロ(2005)は,弱さと強さの両方のバランスが大事だと言っている.
最近では,ハンセン(1999)(リンク先はpdf)リーガンスとマケビリー(2003)(リンク先はpdf)アラルとアリスティン(2011)が,強い関係の方が流れる情報の量(つながりの帯域幅)が多くなって有利だと主張していて,若干,「強い関係」の方が「弱い関係」を一歩リードしている,といった感じだ.

いずれにせよ,いろいろな人と友達になれるまちは楽しい.
一見,自分自身の仕事とは縁遠い人と友達になれたら,「そんな世界があるんだ!」,「そんな考え方があるんだ!」という発見がたくさんあるはずだ.そのためには,対面で会い,飲み,語り合う関係の方がいいのだろう.

髙岡 敦史

WRITTEN BY

髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。