定点観測

なぜ,スポーツがあるのだろう

―― なぜ,オリンピックがあるのだろう.
―― なぜ,トップアスリートは勝利を目指すのだろう.
―― なぜ,スポーツがあるのだろう.
コロナ禍での五輪開催に賛否があるからこそ,そういうことをいつも以上に考えるオリンピックになっている.

今のところの到達点は,

豊かな生き方とはどのようなものか?を発見するため

というものだ.
しかし,このままだとアートも,経済学も哲学も,おそらく自然科学も,すべてがここに行き着いてしまうから,スポーツに限定して言い換えれば,

楽しさを追い求め続けるという豊かな生き方とはどのようなものか?を発見するため

ということになると思う.
発見するのは,アスリートと応援しているわたしたちだ.

試合に敗れて涙する選手がいる.
勝つことを目指して,積み上げてきた膨大なトレーニングの成果を発揮しようとしたけれど相手に勝てなかったという体験は,トレーニングや自身の技能の不足に対する後悔や無念さ,あるいは相手の技能の高さへの嫉妬や絶望を突き付けられるもので,ショックだと思う.(元アスリートとして,とてもよく分かる)
その姿からは,楽しさを追い求めているとは到底思えないだろう.

しかし,冷静に考えてみよう.
スポーツごときで,大の大人が涙を流すのはなぜか?と.

それほどまでに,スポーツにおける競い合いは,人間を没入させるからだ.

なぜか?きっと,スポーツに没入することが楽しいからだろう.
試合に敗れて涙した選手も,また数日後からトレーニングを始める.一方,スポーツに没入できなくなったり,楽しくなくなった選手はスポーツから離れていく.

人間は,本来的に楽しいことに没入したいのではないだろうか.
でも,それは簡単ではない.わたしたちの多くは「真面目にやれ」「人生楽しい事ばかりじゃない」と言われて育ったから.
きっと,スポーツは,楽しさを追い求め続けることの大切さを伝えているのではないかと思う.

謎解きのようだけれど,これからも,このスポーツまちづくりメディア『LIFES』の各コラムと「定点観測」で紐解いていきたい.

髙岡 敦史

WRITTEN BY

髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。