定点観測

スポーツ推進計画策定あるある

スポーツ推進計画の策定に関わることが多い.
そのほとんどで,関与当初から「?」にぶつかってしまう.
私が出会った計画策定プロセスは,担当課職員が素案を書いて,それを審議会や計画策定委員会で検討し,修正版を承認する,という流れになることが多い.しかし,この素案に根本から疑問を持ってしまうことが多いのだ.

まず,現行の推進計画を踏襲しようとする傾向がある.
具体的施策は新しくなるものの,スポーツの定義や計画の理念,構成(目次構成)はあまり変わらない.
現行計画の策定から5年経った時点から,さらにその5年先の計画を立てようとしているのに,だ.つまり,現計画から10年先の未来のことについて書かれるはずなのに,骨組みが変わらないのは不思議だ.

そして,現行計画の成果をさらっと評価して,市民アンケートから次期計画の根拠を導こうとする傾向がある.
本来は,前計画の成果を多面的に評価し,達成された目標と残された課題を抽出する必要がある.市民アンケートは5年間の変容を分析するための手法のひとつだ.しかし,多くの市民アンケートは計画策定のために実施されがちだ.そしてその内容は,スポーツライフの現況把握と市民のスポーツニーズの収集のためのものであることがほとんどだ.

計画策定に必要な情報,つまり政策課題の抽出は,スポーツライフの現況と市民のスポーツニーズの把握からは成し得ない.
なぜなら,政策課題は現時点から立ち上がるものではなく,過去から未来へとつながる時間軸の中から立ち上がるものだからだ.過去は前計画の成果評価から把握できる.未来は目指すべきスポーツライフ(つまり政策ビジョン)だ.今,立案すべき政策は,その間に見出せるはずだ.

スポーツ推進計画が見据える未来は,スポーツの身体的,精神的,社会的,経済的機能が発揮された結果,変容していく市民の生活とまちの動きだ.
そうしたものを見据える未来志向の計画策定にしていきたい.

髙岡 敦史

WRITTEN BY

髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。