定点観測

市民の声は,集めるのではなく,交わすもの

岡山市長選挙が終わった.
近年稀に見る接戦だった.

全体投票率は34.01%,大森雅夫氏は110,019票(得票率56.8%)獲得,浦上雅彦氏は83,793票(得票率43.2%)獲得した.
昨日,「投票率とポピュリズム」で35%が分水嶺になるだろうと予想したが,下記の各区の投票率と各候補の獲得票数からも,あながち大外れではなかったことが分かる.投票率と得票数をNHK岡山支局まとめから再掲しておく.

【投票率35%未満の区】
岡山市北区 34.09%
 大森雅夫氏:48,135(得票率59.5%)
 浦上雅彦氏:32,823(得票率40.5%)
岡山市南区 30.86%
 大森雅夫氏:25,320(得票率60.0%)
 浦上雅彦氏:16,846(得票率40.0%)

【投票率35%以上の区】
岡山市中区 36.31%
 大森雅夫氏:21,572(50.3%)
 浦上雅彦氏:21,347(49.7%)
岡山市東区 35.81%
 大森雅夫氏:14,992(得票率54.0%)
 浦上雅彦氏:12,777(得票率46.0%)

新人候補の得票率は,投票率が35%より低かった区と35%を超えた区の間で6~10%の差があった.投票率がさらに上がっていれば新人候補の当選もあり得たかもしれない.そういう意味では,分水嶺は投票率40%くらいだっただろうか.
選挙結果の詳細な分析は,各候補に票を投じた人たちの属性分析等が必要になるが,追ってどこかから発表されるのを待ちたい.

選挙戦は終わった.
だからと言って,これから展開される政策が常に正しいと決まったわけではない.
都市ビジョン,政策,具体的な施策は市民によって監視されなければならず,それぞれについて多様な市民が直接対話し,より妥当なアイディアを生み出し,そして市長や行政に提案していく必要がある.そういう経験の積み重ねから,わたしたち市民は市民として成長していく.低すぎる投票率も,わたしたちの成長とともに上がってくるだろうし,ポピュリズムも成立しなくなるはずだ.

ポピュリズムはしばらくの間,このまちに残存するだろう.
しかし,分断は悲劇しか生まない.そのことをわたしたちは米国大統領選で学んだ.SNSの偏ったコミュニティの中での対話は決して市民的対話ではない.
明日からは,(コロナ禍の宣言も解除されているし)対話の日々にしたい.

髙岡 敦史

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髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。