定点観測

秋の大切さ

急に肌寒くなった.
第三の書斎スタバでオンライン会議をする時にはテラス席に座るのだが,しっかり着こまないと辛いくらいだ.
この時期,世間にはハロウィーン商品に混ざってクリスマス商品まで出始めているから,肌寒さと相まって秋を通り越して冬がやってきたような感覚に襲われる.

わたしたちは,木々の色付きや空の色,雲の形,日の出と日の入りの時間,旬の食材とその味,空気の温度や匂いといった自然現象から季節の移ろいを感じている.五感で感じることのできる自然が相対的に少ない中心市街地では,すれ違う人たちのファッションや棚に並ぶ商品のラインナップからも季節を感じている.テレビ番組やCM,音楽からも感じることができる.そう考えると,わたしたちの周りは季節に関する情報に溢れていると思える.

ところが,このところの急な寒さは,秋の情報がすっ飛ばされるのではないかと思うほどだ.
春,夏,秋,冬が規則正しく3ヵ月ずつなら,各季節の情報流通期間も同じくらいで,しっかりと各季節を感じられるのだが,夏と冬の情報が多くなってやしないだろうか.

四季の彩り豊かな地域には,彩り豊かな文化が芽吹く.
情報の多様性と冗長性(余分にあること,重複していること)が知識創造にとって必要な要素だ,という知識創造理論になぞらえれば,4つの季節が隣同士で重複しながら,その季節ならではの情報をきちんと流通させないと,文化創造も停滞してしまうのではないかと思う.

四季が夏と冬に偏るのが気候変動によるものなのかはよく分からないが,もう少し秋をはっきり感じたいと思う今日この頃だ.

髙岡 敦史

WRITTEN BY

髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。