定点観測

『おかえりモネ』と二拠点生活

ここ数日,梅雨らしい空模様で,(暑さが異常だなと思って「定点観測」を書いた日もあったので)どこかホッとしている.雲の表情が次々移ろうし,放送中のNHK連続テレビ小説『おかえりモネ』もあって,空を眺めることが多くなっている.(今週月曜日の放送だったか,「雨が降るのは,コップの結露と同じ」という説明に「なるほどー」と思ったから,画像を結露にしてみた)

岡山で暮らすようになって丸12年が経つが,今でも ”晴れの国” の明るさと穏やかさには新鮮な喜びを感じている.それは,幼稚園から高校卒業まで暮らした島根県松江の空との比較があるからだ.

山陰の空は,雲一つなく晴れ渡ることはほとんどない.
西から流れてきて日本海で水分補給した空気が中国山地にぶつかって雲をつくるからだ.それは夏も冬も変わらない.冬なんて,ほぼ毎日が鉛色の空だ.

学生時代,新幹線と特急やくもで年末年始帰省の往復をしていた.
実家からつくばへ戻る帰路,松江駅を出る時には雪か雨で,備中高梁を過ぎたあたりから空の青色の割合が増えてきて,総社に至る頃には晴天,という経験を毎年のようにしていた.その度に「山陽は明るいなぁ…」とうらやましく思っていたものだ.まさか岡山に暮らすことになるとは,その時は夢にも思っていなかった.

地方創生政策が打ち出されてからというもの,「住みたい街」とか「住みよさ」がランキングされるようになった.アンケート結果から算出するものもあれば,官公庁や経済団体が保有しているデータを組み合わせて分析するもの,あるいはそれらを貨幣価値に換算するものなど,ランキングの根拠は様々だ.松江は多くの調査結果で上位に入るまちのひとつで,岡山市はいつも中程度にいる.

調査が様々すぎて,もはや何を信じたらいいのか分からない状況だが,いずれにしても,個人のレベルでは実際に生活体験した地域しか比較できないから,松江より岡山の方が暮らしやすいという実感は,両市とも10年以上暮らした私の中に限っては正しいだろう.もちろん他の人の経験の中では違うかもしれない.

そういう意味では,どのまちが暮らしやすいかは,どこまでいっても主観から出ないし,分厚い生活経験を通して比較ができれば,その主観的評価は常に正しいと言える.

結局,いろんなところに暮らしてみて,暮らしたいところに暮らしなさい,ということだ.
移住お試し事業は多くの自治体が実施しているけれど,期間が短いことがほとんどだ.最低1年は二拠点目として安心して暮らせるような手厚いサポートがあれば,移住や二拠点生活はもっと増えるのではないかと思う.
私も,思索やリフレッシュのための拠点がほしいと思っている.岡山市内とは違う空を見上げて過ごすことができるのは,とても贅沢な気がする.

後記
スポーツやまちづくりから遠い内容の定点観測でもいいかな,という実験回でした.

髙岡 敦史

WRITTEN BY

髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。