スポーツと栄養

野山を走る薬剤師 立花さんのお薬コラム④「華麗に加齢に立ち向かえ!」

 どんな人にも必ず平等に訪れるもの。それは「老い」です。何歳になっても楽しくスポーツを続けるには加齢による様々な体の変化とうまく付き合っていくことが不可欠です。今回は年を取ってもスポーツを続けていくためのコツを岡山県トレイルランニング協会理事で、スポーツファーマシストの立花さんに解説してもらいましょう。(岡山県トレイルランニング協会HPからの転載です)

 今回は歳を重ねると無視出来なくなってくる「疲労回復」について書きたいと思います。

 鍛えている自分のため、サポートしているアスリートのため、資格はありませんが、栄養学の中でも特化した「スポーツ栄養学」を勉強しています。その中で、自分が過去にしてきたことの間違いに気づき、効率のよいトレーニングに加え、食生活を考え直すきっかけを得ました。

 なかなか目標をクリアできない自分に嫌気が差し、トレーニングも試行錯誤しましたが、結果が出ず、体重を落とすことを考えました。 マラソンは体重1kg落とすと「1分速くなる」とか「3分速くなる」などと言われています。

 しかし世間一般でよくありがちな、間違ったダイエットは避けなければなりません。食事制限だけではリバウンドが必ず起こります。まず糖質を制限することを考え、昼食時には炭水化物をほとんど摂らないようにしました。食べていたパンも糖質の少ないブラン(ふすま小麦)を使ったものを食べていました。並行して様々なトレーニングもしていたのですが、この時期は非常に疲れやすく、疲労を感じる日々でした。その状況にも耐え、晴れて目標を達成したのですが、この程度の練習量で疲労が抜けないことに疑問を持っていました。

 加齢の影響もあるだろうとは思っていましたが、そんな中、効率のよいトレーニングをするために読み始めた「スポーツ栄養学」の本で衝撃的な記載を目にするのです。炭水化物を抜いたタンパク質中心の食事にすると「疲労が抜けない」追い込んではいましたが、ランニング自体は大した練習量でもなく、筋トレや体幹トレ、ストレッチとのハイブリッドトレーニング。その練習量と疲労のバランスに疑問を覚えていましたが、実は、疲労が抜けない理由は食事にあったのです。さらに、普段甘いものを食べない私が、菓子パンを欲していた理由もそこには書いてありました。

 炭水化物が足りないと「甘いものが欲しくなる」 よく「疲れた時には甘いものが欲しくなる」と言われますが、まさにそれ。身体が疲れを訴えていたのです。

 第1回のコラム「痛み止めと胃薬」のところでも触れましたが、疲れは肝臓に溜まります。身体の疲れ、肝臓の疲れを回復する時、すぐに使えるエネルギーとして炭水化物(糖質)がとても有効なのです。さらにその回復を助けるビタミンCも共に摂りたいところです。

 毎日走っていると辛い・・・

 毎日走ると疲労が抜けない・・・

 そんな悩みがありませんか?

 皆さんそれぞれ疲労回復のため色々なことを試していると思います。毎日走り続ける理由として速くなりたいということがあるでしょう。やみくもに走る時期もありますがある程度走力がついてきたら考えながら走るべきです。何故なら「漸進性の法則」というものがあるからです。

 毎日毎日ペース走を10kmほどで月間300km前後、これは可能な距離です。しかしそれに費やす時間は前後を含めて月間約30時間以上になるかと思います。なかなか練習のために捻出するのは難しいですよね。さらには疲労が抜ける時間がなく常に疲労が溜まった状態で走り続けることになります。つまり故障しやすい状態です。

 若いうちは疲労が溜まりにくかったり、すぐに疲労が抜けたりします。ですから毎日走っても全然問題ないケースが多いです。しかし、人間は必ず歳をとります。疲労回復について本気で考える事って、実は少ないんじゃないでしょうか。ただ、僕のように人生の折り返し点を過ぎると毎日ペース走をするのは愚の骨頂・・・故障に向かって走っているようなものです。

 疲労回復の近道、それは「老いを受け入れる」こと。そして毎日走らなくてもあいた時間で「身体の衰えを軽減する努力をする」ことだと思います。筋トレもそう。体幹トレもそう。ストレッチもそう。そして食生活の見直しもそうです。

「老い」を受け入れた以上、若い時よりも「効率」を考える必要があります。僕もここに行きつくまでに紆余曲折がありました。転機となったのは師匠の言葉です。

いかに楽をして速くなるか? これに尽きると思います。

立花義章

WRITTEN BY

立花義章
たちばな・よしあき 全国スポーツファーマシスト連携協議会代表。 備前市にある「いんべ薬局」で働く薬剤師。スポーツファーマシストの資格を持ち、アンチ・ドーピング活動に力を入れています。 自身もマラソン・トレイルランの愛好者。