野山を走る薬剤師 立花さんのお薬コラム②「カフェイン慣れして〝過フェイン〟に?」
暑い日が続きますね。スポーツの現場では冷たい飲み物が手放せないシーズン。汗をかいた後に、コンビニで小ぶりで派手な缶に入ったあの飲み物の手が伸びる人もいるのではないでしょうか?スポーツイベントのスポンサーとしてもよく目にするそう、アレです。岡山県トレイルランニング協会理事で、スポーツファーマシストの立花さんによるコラムの2回目は、おなじみのエナジードリンクについて語ってもらいました。(岡山県トレイルランニング協会HPからの転載です)
今回のテーマは「エナジードリンクとカフェイン」です。
いわゆるエナジードリンクの類には大量のカフェインが含まれており、海外では未成年への販売が禁止されているところもあります。 日本でも厚生労働省が食品に含まれるカフェインの過剰摂取については警鐘を鳴らしています。ぜひご一読いただければ幸いです。
その中の一部を抜粋しますと、「カフェインを過剰摂取した場合には、中枢神経系の刺激によるめまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠症、下痢、吐き気等の健康被害をもたらすことがあります。」と書かれています。
カナダ保健省では、カフェインの摂取量を健康な成人は1日400mgまで、4~6歳は1日45mgまで、7~9歳は1日62.5mgまで、10~12歳は1日85mgまでとしています。
これをわかりやすい量で換算すると、外国の方は結構大きなカップでゆっくり飲むようですが、コーヒーをマグカップ3杯で400mg程度です。
では、実際エナジードリンクには、どれくらいの量のカフェインが含まれているのでしょうか?
メジャーなところで見てみると、ノーマルの「MONSTER ENERGY」では1本あたり142mg、ノーマルの「RED BULL」では1本あたり80mgのカフェインが含まれています。
カフェインは普段から口にするものにも含まれていますので、この時点でエナジードリンクは、小学生が飲むことは推奨されないのがわかると思います。
毎日毎日何本も飲む場合にはカフェインによる中毒性の問題が指摘されていますし、これは極端な例ではありますが、成人男性においてもエナジードリンクによるカフェインの過剰摂取で死亡した例もあります。
ちなみに日本中毒学会の調査によると、2011~2015年度に全国38か所の救急医療機関に搬送されたカフェイン中毒患者は101人でした。
患者は若く(中間値25歳)、53例は男性で、97例は錠剤、10例はエナジードリンクを摂取していたそうです。そのうち7例が心停止しています。
このようにカフェインの過剰摂取により恐ろしい事態にもなり得ますが、元々はカテゴリーとして清涼飲料水なのです。余談ですが、救急搬送されるカフェイン中毒患者が急増している2013年は、日本でエナジードリンクの自動販売機での販売 が開始された年であることを書き添えておきます。
ではどのように使うのか?
一般ランナーとしては、もし飲むとすれば、ここぞという時に使うものかと思います。
毎日何本も飲むものではない、ということを肝に銘じておいてください。何事にもバランスというものがあります。ジュースと同じ。ジュースを1日何本も飲みますか?
テレビ番組で「〇〇が、体にいい」となると極端にとる方がおられます。ココアがいい、ブルーベリーがいい、きなこがいい。そして店頭から商品が消える事態に。たしかに体にいいかもしれませんが、そればかりではダメです。何事も適量が大切なのです。
そういった観点からも、先程エナジードリンクを「ここぞという時だけ」飲むように書いたのですが、カフェインだけでパフォーマンスが上がるとは思っていません。もし、パフォーマンスが目に見えて上がるなら、それはドーピングです。
ちなみにアンチ・ドーピングの観点から考えますと、どのようなエナジードリンクでも自己責任で摂取することになりますから、ドーピング検査でひっかかっても文句は言えません。
特にカフェインだけでなく、生薬成分、天然植物成分などを含有しているものは、含有成分がはっきりしていないものが多く禁止物質が含有されている危険が伴います。
補足しておきますが、カフェインを摂取したからと言って、現段階(2020年9月末現在)ではドーピング違反にはなりません。ただ、毎年規則が変わりますので注意してください。
これらは一般ランナーにはまったく関係ないことですが、ランキング上位のトップランナーには大きく関係あることです。トップアスリートは常に口にするものに対しても責任を持たなければなりません。