定点観測

向日葵の種,スポーツの種

不定期更新のわが家の向日葵はすっかり枯れ,燃え尽きたように白くなった.
種が採取できれば来年も夏気分が味わえるな,と思っているのだが,一向に種ができる気配がない.

以前書いたように植物栽培に無知だから,枯れた状態でも水やりっているの?とか,放っておけば種ができるの?とか,色々分からないことが多いけれど,そもそも種ができない植物ってあるの??と思ってしまう.種なしぶどうは,人間が食べやすいように人工的に生み出された種なのだろうけど,向日葵にその必要性はないだろうし…,などと考えている.

人類も,子どもを生み育てることで種を保存し続けてきた.
ひと昔前までは「家督を継ぐ」とか「姓を残す」などと言っていたが,今では,子どももひとつの独立した人格だと認められているし,家を継ぐことを宿命づけられるような人も少ないだろうから,出産と子育ては種や家の保存というより,社会の継承と発展の意味合いが強くなっている.

そこで重要になるのは,文化の継承と創造だ.
スポーツも人類が長い時を経て継承し,創造し続けてきた文化である.
「自宅で観戦を」と叫ばれている東京五輪を通して,子どもたちは家庭での観戦と報道で何を感じ,何を考えただろう.
そして,未来に向けて,どのようなスポーツ文化を継承し,これからどんなスポーツを創造していくだろう.
できれば,BMXフリースタイルスケートボードに出場した彼女たちが見せてくれた文化が拡がっていくことを期待したい.

スポーツ文化の継承・創造を担う「種の育成と採取」は,家庭におけるスポーツとの関わり,地域社会におけるスポーツとの関わり,そして教育にかかっている.
わが家の向日葵が種を残すことを祈りつつ,スポーツ文化の継承を想う今日この頃だ.

髙岡 敦史

WRITTEN BY

髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。