定点観測

パラを迎えるためにオリを送る,お盆だけに(終)

東京パラリンピックも多くの会場で無観客になるようだ.
では,オリンピックと同じだけ,テレビやネット配信で観戦できるだろうか?

国際パラリンピック委員会(IPC)は,2015年6月に,2018年平昌冬季大会から今大会までの夏期・冬季4大会の日本国内での独占放送権をNHKが獲得したと発表している.つまり,NHKが放送・配信する番組では放送されるが,民放各局やネット配信会社はNHKに放映権料を支払わなければ放送できない,ということだ.民放での中継がどれだけあるのか,いささか心許ない.(なお,NHKの東京2020パラリンピック・公式ページはこちら
なぜ,そんなことになるのだろう.
おそらく,パラリンピックは「金にならない」からだ.

「パラを迎えるためにオリを送る,お盆だけに②:問題を遠くからみる(上)(2021.08.13)」で書いたように,オリンピックは,商業化し,政治化してきた.
パラリンピックは,オリンピックほど商業化もしていないし,政治化もしていない.パラリンピックの招致・開催が,ビジネスや政治に利用するだけの役割を期待されていない,ということだろう.

いや,商業化も政治化もしなくていいのだ.しかし,パラリンピックやパラリンピアンが社会に与えることができるインパクトは,オリンピックの比ではないはずだ.そのことについてのひとつの提案は「スポーツが本当は見せたい未来(2021.07.19)」に書いた.
このことに思いを馳せ,パラリンピックを観たいものだ.「なぜ期待されないのか?」と.そして「期待された後,商業化も政治化もしない未来をどう創ればいいのか?」と.

なお,オリンピックの際に露呈したガバナンス&マネジメントの不全は,ぜひパラリンピックには少しでも改善してほしいが,組織改善は一朝一夕にできるものではないから,せめてパラリンピアンたちの身体と精神を最優先にして意思決定してほしい.

髙岡 敦史

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髙岡 敦史
スポーツまちづくり会社・合同会社Sports Drive 社長 岡山大学大学院教育学研究科 准教授、博士(体育科学) スポーツ経営学を専門とする研究者であり、スポーツまちづくりの現場に多く参画している。近著に『スポーツまちづくりの教科書』(2019年、青弓社)。